6話 ページ7
ゆうべ、創也が消えた事が気になってわざわざ図書室まで足を運んだんだ。
気まずい空気くらいぶち破ってやる!
椅子を一つガタガタ引き摺っていき、僕は二人の前に座った。
そして、本のページに集中している二人に聞いた。
「君たちって、夜の散歩が好きなの?」
そう聞いた時の創也の顔…形のいい目が大きく見開かれている。
そして本から顔を上げ、僕を真正面から見て言った。
創也「内藤内人くん…君、ゆうべ…見てたの?」
Aも、びっくりした顔で僕を見ている。
創也の言い方は、さっきとは微妙に違う。初めて僕を人間だと認めてくれたような言い方だ。
「うん。…いや、あれ?見ちゃまずかったのかな?」
あまりに真剣な顔で見られて、僕は少し狼狽えてしまった。
「別に、君たちが何をしてたのかは知らないよ。でも、本当に楽しそうに歩いてるからさ…何かいいことでもあったのかと思って」
僕は、あわてて言い訳めいたことをいくつか口にする。
創也は本を閉じ、高そうなフレームの眼鏡を外し、Aは僕のことを見つめつづけている。
『…見てたの?』
イタズラを見つかった子どものような顔をして、Aが聞く。
創也「まいったな…」
創也が、照れくさそうに頭をかいた。
なんだか…なんだかそれは、いつもの創也とちがって、とても親しみやすい仕草だった。
創也「あそこは学校からも離れてるし、あんなところで知り合いに会うとは思ってなかったな…」
そして二人は、そんなところで何をしてたんだ?って感じで僕を見る。
僕は両手を振り回しながら説明する。
「塾があるんだ、8時から10時まで。創也たちは勉強できるから塾なんか関係ないだろうけど、僕なんか大変さ。母さんに言われて、毎日のように塾へ行ってるんだ」
と、あまり自慢にならないことを、ペラペラと喋る。
そして、僕は1番気になっている事を聞いた。
「でさ、あのあとどこへいったの?通りを曲がったら、消えちゃっただろ?」
創也「そこまで見てたのか…」
創也がため息と一緒に、ポケットから鍵を取り出す。
創也「今日は午前中で授業が終わるだろ?僕は午後から、この鍵がかかっている場所にいる。気が向いたらおいで。」
創也に渡された鍵。
銀色のありふれた鍵だ。
差し込む部分に小さな黒い磁石が5個ついているのだけが、すこし変わってる。
「でも…鍵だけもらっても、創也がどこにいるかわからなかったら使いようがないじゃないか」
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すた(プロフ) - 円陣はずれさん» ありがとうございます! (7月27日 22時) (レス) id: 547c4df5f1 (このIDを非表示/違反報告)
円陣はずれ - 都会トムの話って少ないですよね...悲しいです。続き楽しみにしてますして! (2023年2月25日 22時) (レス) id: dd75b894fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すた x他1人 | 作成日時:2022年6月18日 23時