因果応報 (ページ21)

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紫Side

「康二にはこのままでいてほしいんだ…。」

「なんっ…で……っ」

「思い出して欲しくない。思い出したら苦しむのは康二だろ？悲しむのは康二だろ？俺、嫌なんだよ…。何も悪くないあいつが傷付くの…」

「そっ、れは…」

「あんな記憶いらないんだよ。そしたら皆が幸せじゃん。めめと阿部ちゃんも気まずくなくなるし、俺らも忘れれば良い…。だから…。康二と付き合ってたってことを無かったことにしてくれ…」

頼む…

そう頭を下げると聞こえてきたのはただただ泣きじゃくる声だけで。

頭上から流れる悲しい音に、
俺はなかなか頭を上げることが出来なかった。

しばらくして顔を上げると両手で顔を覆い、
肩を揺らして泣いているめめが目に映る

「…幸せにする。俺は絶対あいつを泣かせない。だからもう諦めてほしい。……康二の為に」

ぴくり、肩を揺らしためめ。

康二の為に…だなんて

俺はなんて卑怯なんだろう。

本当にこれが康二の為になるのかなんて分からない。

こんなの…

本当は全部、俺の為じゃないか…。

康二を言い訳にしてめめを遠ざけるなんて、
俺は本当に最低な最年長だ…

康二の好きな奴はめめしかいない。

ちゃんと謝りさえすれば康二はめめを許すだろうし、
そうなればめめは二度と離れない。

康二があんなにも辛い思いをしているのに、
俺はこれをチャンスだと思ってしまったんだ…

あわよくば好きになってくれたら良いなと、
気まずくて隣にいられないめめの代わりに康二を甘やかし続けて。

心配するふりをして、優しいふりをして、
自分の気持ちばかりを優先させていた。

「…ふっかさんと付き合ったら…っ…幸せになれるって…分かってる…分かってるけど…っ」

「…うん。」

「諦めるなんて無理です…っ！無理なんです…っ」

康二が記憶を無くしてから、
こいつは何度涙を流したのだろう…

真っ赤になった目からずっと溢れている涙が痛々しくてつい目を逸らす。

「好き…なんです…っ。俺っ…本当に康二が好きなんですっ…」

「でも、裏切っただろ？」

「…っ」

「都合良すぎるよお前…。」

最低だよ、俺…。

そんなことを言ったらもう、
めめは何も言えないって分かっててそう言った。

本当に最低だ……

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