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黒Side


それはあまりにも懐かしい温もりで、
久々過ぎる大好きな人の匂いに包まれて
涙が止まらなかった。


「康二…っ」


康二、と名前を呼ぶたびに
好きだという気持ちが伝われば良いのに…

全て自業自得で、自分が悪いのにもかかわらず
目の前で大好きな人が奪われていく様子を見て
冷静でいられるほど、俺は大人ではなかった

嫉妬深いという康二を可愛いと言ったふっかさんがやけに大人に見えて、
自分はこんなにも嫉妬しているくせに嫉妬されてめんどくさいと
思っていたあの頃の自分は、ただの子どもにしか思えなかった

自分には無い包容力を持つふっかさんに奪われたのが嫌だった。

自分みたいな子供じゃなくて、
大人なふっかさんを選んだ康二が嫌だった。

ただそれだけで…。

分かりやすい挑発にすぐカッとなって。

こんなのふっかさんの思うつぼなのに、
まだまだガキな俺は、

気が付いたらふっかさんの首を絞めていた

嫌われて当たり前なことをしたのに、
ひたすら謝る俺を康二はただ抱き締めてくれた。


ねぇ康二…

本当に大丈夫なのかなぁ…。

康二は本当に、記憶が戻っても今と同じことを言ってくれる…?

大丈夫だよって、言ってくれる…?

ねぇ、康二…

教えてよ…っ


「落ち着いた…?」

「…ん。」

「なら、ちゃんと謝ろう?ふっかさんも、ちゃんとめめに謝ってな?」

「…」


康二に謝罪を促されたけど、
俺もふっかさんも何も言えないまま床に視線を向けた。

この嫌な沈黙を破ったのは、
やれやれ…と少し呆れた顔をした康二で…。


「…じゃあ、俺に謝って?」

「「えっ…」」

「必要以上にめめを煽ったやろ?ふっかさん。めめは手ぇ出したやん。俺、めちゃくちゃビビった。二人とも俺がビビりなこと知ってるくせにビビらせたやん…。やから…まずは俺に謝って?」


そう言ってふっかさんと俺を交互に見る康二。


「ごめんって…」

「俺もごめん」

「ん。じゃあ次はお互いに!俺に言えたんやから言えるやろ?」

「…ん。分かった」


俺らの謝罪に満足したかのように頷いたかと思えば
またふっかさんへの謝罪を求められて。

戸惑っている俺をよそにふっかさんは深く頷いて。


「…めめ、話せる?」


と、静かに言った。





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真夏野スピカ(プロフ) - なさん» パス外しました! (2020年12月14日 0時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)
真夏野スピカ(プロフ) - ともぴーさん» パス外しました! (2020年12月14日 0時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)
真夏野スピカ(プロフ) - かおりさん» パス外しました! (2020年12月14日 0時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 真夏野スピカさん» そうなんですね!更新楽しみにしてます。 (2020年12月13日 20時) (レス) id: 67c533f73c (このIDを非表示/違反報告)
ともぴー(プロフ) - そうでしたか!更新楽しみに待ってます。 (2020年12月13日 19時) (レス) id: e72f97e6fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:真夏野スピカ | 作成日時:2020年11月10日 22時

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