第九話 勝負�� ページ26
炭治郎さんたちは戻ってきていないだろうか。
昨日の夜、任務に行くと別れて私は眠りについた。
起きたらお館様のお屋敷だったので、あれから会えていない。
彼らはここに住んでいるわけではないらしいので、またしばらく会えないかもしれない。
寂しいと思いつつも、仕方ないと諦め自分の部屋に行く。
そこにはアオイさんがいて、私のための服を持ってきてくれていたらしい。
「洋装のほうがいいだろうって、しのぶ様が。」
そこにあったのは私にも着やすいような服で、蝶屋敷の人たちには本当に感謝しかない。
お礼をいうと、アオイさんはそういえば、と思い出したように言った。
「炭治郎さんたちが探していましたよ。今は道場にいると思いますから、行ってあげてください。」
アオイさんから場所を聞き、少し小走りで進む。ついさっき会えないだろうと諦めた人たちが待っていると考えると頬が緩む。
出会った人たちはみんな優しくていい人ばかりだったけど、最初に会った彼らはやっぱり私にとって特別なようだ。
道場に近づくにつれて善逸さんの嫌がる声と伊之助さんの怒鳴り声が聞こえてくる。
ああ、本当にいるんだ。
扉をゆっくり開けると、中にいた炭治郎さん善逸さん伊之助さんがこちらを見た。
「A！」
「Aちゃん！？」
「おう、返ってきたか花子！」
ちょっと待って。
花子って私の事か？そういえば伊之助さんは人の名前を覚えるのが苦手だと善逸さんが言っていた気がする。
…だとしてもかすってすらいないのだが。
「アオイさんからしのぶさんと出かけていると聞いていたんだ。どこに行って……」
「Aちゃんんん！！助けてくれよぉぉ！！」
炭治郎さんの言葉をさえぎって、善逸さんが抱き着いてくる。
後ろに倒れそうな勢いだったが、なんとか踏ん張ってたえた。
「えと…どうしたんですか？」
「俺は嫌だって言ってんのに無理やり手合わせしようとしてくるんだよぉぉ！！」
涙を流しながら私の腰に縋りつく善逸さん。
どうしようかと思っていると伊之助さんが善逸さんを引っ張った。
「てめえいい加減にしろよ！」
勝負しろ！と引っ張る伊之助さんに、嫌だ！と私から手を離さない善逸さん。
なんなんだろう、この状況は。
複雑な心境で炭治郎さんを見ると、彼は苦笑いしていた。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
