喫煙所は甘い言葉を溶かす ページ26
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side S
「いやあ〜翔ちゃんも大胆だよね」
「は？」
俺とAの噂が広まったのは言うまでもない。
“俺の彼女”的発言をした日の翌日には、噂は飛ぶ鳥を落とす勢いで広まった。
以前から彼女の有無、色恋事は面倒だという理由で隠し通していたのもあり、“俺の彼女”だとアピールした言動は、衝撃的なものだったのかもしれない。
関係を持っても、絶対に誰にも言い触らすなと強く言っていたくらいの俺が、こんなにも露骨な行動を引き起こしたのは異常だ。
「翔ちゃんにしては思い切った行動だったよね」
「イラつくから黙れよ」
「“こいつが嫉妬するんで飲み会はパスで”」
「くだらねぇマネすんな」
「もうすっごい大騒ぎ、びっくり(笑)」
面白可笑しく俺の発言を笑いながら言う大野の腹黒さにイライラする。
思い切り過ぎた、とは後から思ったが、回りくどいやり方をするのは逆に効率が悪い。
だったらいっそ、俺の女アピールをすれば、近付いてくる女はいなくなると考えた結果が招いた言動。
「そういえば翔ちゃん、俺にタバコは？」
「何のことですか？」
「え？とぼけるつもり？(笑)」
煙を吐き出しながら、灰を落とした大野が間抜けな顔で俺を見た。
ふわふわとした雰囲気は自らが作り上げているのかと疑いたくなるくらい、中身は狡猾なほど腹黒い。計算高さは異常すぎる。
「知らねぇ」
「はあ？翔ちゃん意地悪〜」
「あんたが言うな」
「んふふ、まあね」
もうタバコはいいよ、と諦めた大野は「あ、Aちゃんだ」とドアの方を向いた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年2月25日 15時
