133:不機嫌な訳 ページ13
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「ねえ、Aさん」
「うん？」
「最近櫻井さん機嫌悪くないっすか？」
コップに入った水を一口喉に流し込んだあと、相葉くんがチラッと私に視線を向け、そう問い掛けて来た。
やっぱり私の主観ではなく、相葉くんから見ても櫻井は不機嫌そうに見えるのか。
美形な櫻井は真顔でいると冷たく見えがちだけど、仕事モードのときはその辺りに気を遣っているのか、上司などと話すときは、いつも笑顔を意識しているように見える。
そんな櫻井が他者から見ても不機嫌さを醸し出しているのはらしくない。
「そうかなぁ…？」
なんて適当な返しをする。不機嫌な理由の大半を占めているのは私だと思う、とは言えるはずない。
櫻井との仲が拗れているのは、そもそも私に弁解させてくれない櫻井にも非があると思う。
意外と櫻井って頑固だ。私の話を聞こうとしてくれない。
「ごめん」と素直に謝ったって許してくれないし、弁解しようとしたって、「言い訳なんて聞きたくない」の一点張りだし。
前からそうだったなぁ、付き合い始めたときから言い訳は聞かない主義だった。結果だけを重視する。
そりゃ今までだって全部私が悪かった。
今回のことだって、百歩譲ったとしても私が悪いのは分かってる。
でも何であんなに怒るのか分かんないんだもん。
束縛とか嫉妬とか嫌いそうなのに、どうして自分を追い詰めてまでも無駄な感情を抱くのか。
ここまで来たら嫌われちゃったのかな、って思っちゃうじゃない。
大野先輩にはそんなことないよって言ってくれたけどさ。
さすがに私だって傷つくんだから、バカ。櫻井のバカ。ああ、もうすっごい好きなのに。
避けられたって、不機嫌な態度をされても、呆れるほど私は櫻井のこと好きでたまらないのに。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
