もっとちょこっと (ページ4)

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「なぁちょっと座らね？」

それ、乾かさないと帰れないし。

そう付け加え俺のびしょ濡れになった靴達を指差す北山は、自分だけはちゃっかり靴と靴下は脱いでたらしい。

ぬかりないなぁ…。

北山の隣を腰掛けるとさっきまでの子供っぽい雰囲気は何処へやら、

夜空を見上げるその横顔は一気に大人っぽく妖艶な雰囲気を醸し出してる。

絞って一回りくらい小さくなった顔に、

上向きの睫毛、すべすべの肌…

若返ってんじゃないかってくらい、綺麗。

可愛くなった、し、…綺麗になった。

どうせそんなの口先でしか言えないし言葉には出さないけど。

北山は変わってないようで変わってる。

…だって、ほら。

徐ろにポッケからタバコを出して咥えだす。

こんな事、しなかった。

こんなに掴めなくて俺を振り回してた北山でも、

俺の前では取り繕おうとしてくれてた。

可愛い物好きな俺の為に可愛く居ようとしてくれてたからか、

お風呂上がりにパンツ一丁で出てきた事だって無いし、

ビールを飲む時もあまり多くは飲まなかった。

それ以外にもっと気を付ける所あるんじゃない？って思ってたし、

別に無理しなくていいって言ったけど

頑なに聞かなかった北山が可愛かった。

それ以外はガサツだし男らしい癖に。

北山のその拘りの基準はよく分からなかったし今も分からないけど。

タバコだって、俺の前では吸わなかった。

別に悲しくない、

落ち込んでもない。

北山がただ変わっただけだから。

俺が好きだったのはあの頃の北山で、

今の北山じゃない。

他にも考え方や行動も大人になった、

相変わらずしっかりしてるし真面目だし。

今の俺と比べると北山は何倍も成長してる。

逆に北山は、あの頃と何も変わってない俺を見てどう思うんだろうか。