ーNo.74 ページ34
(望月 side)
『あと、リスカなんですけど、』
本題に入ったように大輔さんは姿勢を整える。
『見たらわかると思うんですけど、今日に限った事じゃなくて、』
さっきまでとは違って大輔さんの視線も、背中から伝わる体温も優しい相づちも無くて、
静かに聞き入っている様子だった。
『大輔さんが家を出てから家に戻ってする日が多くて、』
初めて腕を切った日を思い出す。
タラタラと流れる血。
昔転んだ時に流れてきたような色ではなくて、罪悪感を感じさせる色。
抑えても抑えても赤く染っていく白いタオル。
『私、大輔さんにだけは心配を掛けたくなくて、、』
ああ、
こんなにも涙って止まらないものか。
『結局今めちゃめちゃ心配かけてることは分かってるんですけど、、でも、、迷惑かけたくなくて、なのに学校に行けなかったり大輔さんの期待に沿えるようなことが出来なくて、』
思いが溢れる。
止まらない。
気持ちも、言葉も、涙も。
『大輔さんにも捨てられるんじゃないかって、何度も思いました。』
浪「お前、、、」
固く閉ざされた大輔さんの口が開いた。
浪「俺のこと、そんなに信じられないか？頼りないか？」
心なしか大輔さんもとてつもなく涙目で、
でも立場の上か、私の前だからか、泣こうとはしない。
『そうじゃないんです、、だけど、』
浪「俺はね、Aちゃんのこと本当に大事に思ってるし、本当に娘だと思ってるし、、俺の娘になった日のことずっと覚えてるよ、」
そう言われ、私もまたあの日を思い出す。
今日は、昔を思い出してばかりだ。
浪「守りたいとも、幸せにさせてやるとも思った。それは今も変わらない。」
優しかった大輔さんの声が、少しずつ力強くなる。
浪「親として、愛してるから。」
普段だったらこんなこと言わないだろう。
大輔さんは気持ちを込めて力強く言った。
『私は、もう幸せです。こんな素敵なお父さんに出会えて。』
大輔さんの方を、大輔さんの目を見る。
浪「じゃあ、もっともっと幸せにしてやる。だから、もっと、俺を頼ってくれないか？」
何度も何度も言われたことのある言葉だったけど、の今日は特別だった。
『こんな私でも、いいですか、』
浪「いいに決まってるだろ。」
私を認めてくれる人は、私の居場所は、ここにあったんだ。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 390人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男性声優」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています！更新停止状態のままですが更新はされるのでしょうか？ (2021年3月23日 10時) (
レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
あま(プロフ) - 土さん» はじめまして、コメントありがとうございます、、！そう言って頂けまして幸いです。これからもよろしくお願いします ((○|￣|_ (2020年1月27日 23時) (レス) id: 0a09fcbdcd (このIDを非表示/違反報告)
土(プロフ) - はじめまして コメント失礼します。とても感情移入できるシーンがあって，個人的にはこの話好きです！！ ゆっくりでいいので更新頑張ってくださいね！！ (2020年1月23日 21時) (レス) id: 9f84f5d7d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あま | 作成日時：2019年12月24日 20時
