標的316 ページ30
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不敵に笑む風琳の瞳にほんの少し安堵が滲む。その風琳の表情にタマはくしゃりと泣きそうに顔を歪めた。
(これでよかったんだ。この選択肢で)
もしこのままタマが何も言わなかったら風琳は言葉の通りに本当にツナを殺しに行っていたことだろう。それほど彼女の瞳は本気だった。
しかしタマの心は悲鳴を上げていた。前世今世共にタマはずっと彼女のことを慕っていたのだ。
(ずっとお姉ちゃんに守ってもらった。ずっとお姉ちゃんに優しくしてもらった)
ーー…そしてずっとお姉ちゃんが側にいてくれた。
「……っ」
彼女を倒したくないと言っている心をなんとか押し殺すタマはぐっと奥歯を噛み締めゆっくり立ち上がる。先程壁にぶつかった衝撃からか足がふらついたが、そこは薙刀に重心をかけた。
ポロリポロリと熱い雫が頰を伝い瞳から流れ落ちるのが自分でもわかった。ああ今自分は泣いているんだなとどこか他人行儀に考える。
(本当、私って泣き虫だなぁ。自覚はあるんだけど涙の止め方がわからないや)
はは、っと自嘲混じりの笑みが浮かぶ。嗚咽を漏らさず涙を拭うこともせず、ただ静かに涙を流すタマは潤む視界の中、彼女を見据えた。
不敵な笑みを浮かべていた彼女の表情に動揺の色が見えた。だが、何も言わずに武器を構えているところから察するに慰めの言葉はかけないつもりらしい。
それでこそ私のお姉ちゃんだとタマは少し笑みを浮かべた。自分の言葉は曲げない。こうと決めたらやり通す。
なら自分もその期待に答えなくてはならない。そうじゃなきゃその期待を裏切ることになるのではないだろうか。タマは腰にぶら下がる匣を手に取ると死ぬ気の炎を灯した。アイボリー色の炎がゆらりと揺れる。
「シズ」
お願い。そう呟く彼女は同時にボンゴレ匣の凹みにボンゴレリングを差し込んだ。ドシュっと勢いよく飛び出すは真っ白な毛玉である。
その毛玉は宙で弧を描き彼女の肩に着地した。
ふわっとした真っ白な毛並みにルビーのように赤い円らな瞳。ピンと立った耳には雪属性の炎が灯っている。
「
キュゥゥっと愛らしく鳴く雪兎、もといシズはタマの方を見る。うるうると瞳を潤ませ、え、マジでやるの?と訴えかけていた。
「ごめんね。けどやらないと負けちゃうから…」
申し訳なさそうに眉を下げるタマにシズはしゅんと肩を落とす。だが彼女の気持ちを汲んだのだろう、わかったと言ったように小さく頷いた。
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ミリア - 凄く良かった作品で続きが楽しみです。今後他の作品を作る予定があったら雲雀さんかツナの成り代わりか姉か妹か娘でコラボかトリップか転生した刀剣乱舞かワールドトリガーかアニメKかワンピースの作品が読んで見たいです。説明が下手ならすみません。今後も応援します (2018年11月24日 15時) (レス) id: 9ed3e7f136 (このIDを非表示/違反報告)
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