【ナツキスバル】浴室4 ページ40
──────
急いで服を着て部屋へ戻る。
お互いしばらく無言だった。
時計の秒針の音だけが響く中、先に沈黙を破ったのは彼だった。
「あのさぁ……」
「はい……」
「……ほんとにいいんだな?」
「……うん」
「わかった……」
「……お布団、敷いておいたから」
「あー……」
彼は頭をガシガシ掻いた後、私を抱きかかえて寝室へ向かった。いつもより優しくベッドに下ろされ、そのまま覆いかぶさられる。
「あの」
「ん?どした?」
「電気消してほしいなぁ〜なんて思ってたりして……」
「……。」
スバルは無言でリモコンを操作して部屋の明かりを消してくれた。
「これでいいか?」
「ありがと」
暗闇の中、彼の顔が見えにくくなる。
それでもその瞳がこちらを見つめていることがわかって少しだけ緊張する。
「A……」
耳元で囁かれ、身体が跳ねる。
「好きだよ」
「……知ってる……」
スバルは少し眉を寄せて不貞腐れる。
「そこは『私も』って言ってくれると男の子的には滾るものがあるんだけどなぁ」
「可愛げがなくてごめんよ」
今度は私がふてくされたふりをすると、「そういうとこが好きなんだよ」と、スバルがなだめるように優しく頬を撫でた。
「(男の人の手だ)」
頬に触れる手を伝い、そっと引き締まった体を引き寄せる。
お互いがヘタレ過ぎて、ろくにキスなんてしてないものだから、こんな序盤で緊張する。
彼の後頭部をぐいっと引き寄せ、その薄い唇に下手くそすぎるキスをする。
つもり、が
がちん!!
「いっってェ!!」
「いっったァ!!」
下手くそどころの話ではなかった。
歯をぶつけた痛みで涙が出てくる。
あまりの痛さに口をおさえる私達。
ムードもへったくれもない。
なんなんだこれ。
お互いに悶絶しているうちにだんだんおかしくなってきて笑い出す。
ひとしきり笑ったあと、どちらからというわけでもなく、もう一度口づけを交わした。
今度こそちゃんとした大人のキスをした。まだまだヘタレで下手くそだけど。
「ふふ、スバルもまだまだオコサマだね」
ニヤリといやらしく笑ってみせると、呆れた顔で「さっきまで緊張で声裏返してたのは誰だったっけ?」なんて聞いてくるので、脇腹を抓ってやった。
涙目で痛がる様を見て、妙に胸の内が心地よい温度に温まる。こいつが恋人でよかったなぁなんてしみじみ思ってしまうのは、年のせいなのかなぁ。
23人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
「」(プロフ) - 誰かナツキスバルのゆめしょ書いてよぉ…… (2022年9月24日 22時) (レス) id: 4fb2260fe5 (このIDを非表示/違反報告)
「」(プロフ) - 新しい話ができ次第、前作のエピソードを一つ消す予定です。 (2022年5月21日 15時) (レス) id: 4fb2260fe5 (このIDを非表示/違反報告)
「」(プロフ) - リアルのお仕事が死ぬほど忙しいです。 (2022年5月21日 15時) (レス) id: 4fb2260fe5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:「」 x他1人 | 作成日時:2021年9月15日 8時