生きるスマホ。‐the smart story‐

ごめんね ページ15

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「俺様は、そんな無駄なことをした覚えはない」


「だって、だって、あたし、ちゃんと……」


「ちゃんと？」


そこで、はっと気付いた。


今朝の出来事が、記憶を巻き戻すように鮮明に、脳裏に蘇ってくる。


「あたし、今日遅刻して――」


電源を切り忘れた、のだ。


何度今朝のことを思い出してみても、やはり電源を切った記憶がない。


「嘘……」


「ほらな、だから言っただろ」


目線を外したまま、落ち着いた声でそう呟くワイノ。


全ては、あたしなはやとちりと勘違いだったわけだ。


「ごめんね、ワイノ」


「まぁ、マナーモードを解除したのは俺様だけどな」


謝ったのもつかの間、思い切りドヤ顔をぶつけられた。


さっきの声とは一変した、調子に乗ったいつものワイノの声。


その全てに、身体のどこかから自然と怒りが湧いてきた。


「あんたねぇ……」


「どうする？ 拒否しちまうか？」


「その前に、一緒に楽しい楽しいプレス工場に行こっか」


「なっ、お前、まさかっ！」


「大丈夫。気の済むまで、ぺちゃんこにしてあげるからね」


「それだけはやめろぉぉ！」


私は学んだ。


ワイノはアプリだから死にはしない。


でも、それなりの痛みっていうのは感じるらしい。


それに、自分からご主人様を拒否することはできない。


つまり――


「たっぷりと痛めつけてあげられるってことだね」


「本っ当にそれだけは勘弁してくれ！」


誰もいなくなった教室には、ワイノの悲痛な叫び声がいつまでも響いていた。

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