生きるスマホ。‐the smart story‐

たぬき派 ページ11

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「ワイノ、知ってたのに、なんで教えてくれなかったの!?」


「俺様をこき使った罰だ」


「そんな……どう、しよう」


思わず、また泣きそうになる。


せっかく張り切って作ろうと思ったのに。


太郎さんのために、頑張って作ろうと思ったのに。


「……まぁ、そんな泣きそうな顔すんな」


「あんたは黙っててよ」


「これだけ冷蔵庫に材料があれば、あれができるかもしれないぞ」


　＊


６時までには作ろうと思ってたのに、それが出来上がったのは１時間オーバーの午後７時だった。


急いで新品のパックに詰めると、紙袋に丁寧に入れる。


「おい、もう7時10分になるぞ」


「分かってる！」


ワイノに指摘されたことに少々いらつきながらも、大きく深呼吸をして家を出た。


　＊


大きな玄関の身構えながら、ゆっくりとインターホンを押す。


「はい」


太郎さんの声だ。


「あの……木之本です」


「あぁ、Aちゃん！ ちょっと待っててね」


直後、家の中を誰かが歩き回る音がする。


私はもう一度、汗ばんだ手で紙袋を握りしめた。


「まさか、本当に作ってきてくれるとは……」


「あ、もうおかずあったりしたら、すみません！」


「ううん。今日は母さん出かけてるし、どん兵衛食べるつもりだったから」


「どん兵衛ですか(笑)」


「俺はね、たぬき派なの(笑)」


そうして少したわいもない話をした後、私は例の物を渡した。

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