【番外編】高嶺の花子さんと1年前

-13- ページ13

・・・・・






少し早めにお開きになった。






酔いを軽く覚えながら、家まで歩いて帰る。






いつものように、海は穏やか。






無性にイライラして、手にしていた、空のペットボトルを海に投げつけた。





ふと、携帯が電話の着信を告げる。





画面には、“マユ”と出ていて、そっと通話ボタンを押した。





「もしもーし。」


マユ「もしもし？今大丈夫？」


「大丈夫だけど、どした？」


マユ「ううん。…声、聴きたくなって。」


「つい数時間前会ってたろ笑」


マユ「ごめん…」






マユの声を聞いてたら、なんだか気持ちが落ち着いてきて。






公園のベンチに腰掛けて、携帯から聞こえる、マユの声に耳を傾けた。






「…マユ。」


マユ「ん？」


「…ごめん、なんでもない。」


マユ「なにそれ笑」


「…ただ、呼びたくなっただけ。」







ふふ笑、とマユが嬉しそうに笑う。







思わず、俺のほおも緩んで、そっと電話の向こうから聞こえるマユの声に、耳をすませた。






「…なあ。」


マユ「んー？？」


「…俺、さ。」


マユ「うん？」


「…マユに、付いてっていい？」


マユ「…それでいいの？」


「……それが、いい。」






マユと話してると、色々なことが忘れられる。





マユと話してると、心が落ち着く。






…マユとなら、逃げられるんだ。

-14-→←-12-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す