元私の本丸参の巻 (ページ27)

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道場にてページ27

鍛練の終わってしんとした道場に私は一人倒れ込んでいた。木板で出来た床の冷たさがひんやりと体に染み込む。
起き上がってウェストポーチの短刀を抜いた。外からの僅かな光を反射して刃がぬらりと光る。
美しくて、恐ろしい。
人を殺すモノ、魅力するモノ。
人に対する絶対的なナニか。
私が彼ら刀剣男士と出会ったときの感想がまさにそれだった。美少年や美青年と様々なカタチをとってはいるが、総じて脆くて儚そうな外見をしているのにも関わらず戦場となると純粋な力となる。綺麗で怖い。

だけど
ほけほけしたお爺ちゃんみたいだったりイタズラが三度の飯より好きだったり儚げ美少年かと思いきや中身は親父だったりした彼らの人間らしいあったかい所を知った。彼らのそういうところが愛しかった。愛していた。

無論、戦場での彼らも好きだ。でも、怖かった。あんな人間離れした一面に惹かれる自分が怖かった。残虐で残虐で途方もなく綺麗な姿を彼らはしていた。私が理解できない美を纏った彼らが好きだった。でも愛せなかった。

ふう、と大きく息を吐く。だから、と唇だけが動いた。
だから、私は間違えた。
私が理解した彼らは私がこれ以上審神者を続けられないと知ったら悲しむし、苦しむ。
貴方達の刀としての部分、私が理解し得ない所を私は無視した。

あぁ、違う。
別に当時の私はそんな深く考えてた訳じゃない。

ただ知られたくなかった。
自分が役立たずになってしまったことを。
審神者として彼らを次の主に渡すなんて考えたくなかった。

せめて──自分の居ない場所でやって。
そう思った。

だから逃げた。転移装置を使って現世に戻って通ってた病院に入院した。どうせバレるけど次の審神者が決まるまでは見つからないよう痕跡を丁寧に消した。

その結果沢山の審神者が犠牲になった。
私の体は完治したけど本丸をぼろぼろにした。

殺したい。この凶器で私を。
でも、出来ない。柳星様を守らなくちゃならない。刀剣男士に殺されることは出来ても自分でなんて勝手が許されるものか。

ﾀﾞﾝ

畜生。
短刀を戻してまた床に倒れ込むと涙が流れた。
畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生。

私の、せいだ。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

それでも、もうあの頃には戻れない。

止まらせもしない。

柳星様と進ませる、この本丸を。絶対に。