元私の本丸参の巻 (ページ26)

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集中ページ26

「おー、…どうした？顔色酷いぞ。」
鶴丸様の話が終わって審神者部屋に帰る途中で同田貫正国様とすれ違った。指摘されて思わず顔を押さえる。
「薬研のとこ行くか？」
「あ、いえ大丈夫です…。それより、そんなにヤバいですか、顔色。」
「おぉ、真っ青だ。」
うんうん、と頷く同田貫様を前にこのままでは柳星様が動揺するかもしれないと思った。顔色が大丈夫になるまで人目につかないところで休憩した方がいいだろうか。
「あーあ、あんたに鍛練の相手してもらおうとしてたんたけどこりゃ日を改めた方がいいな。」
残念そうな言葉の中の鍛練、という言葉に惹かれた。一回、頭の中を空っぽにしたかった。
「あの！鍛練お付き合いさせてください！」
「だけどあんたホントに顔色悪いぞ。やめといた方が…。」
「いえ、是非。」
有無を言わせないように強い口調で言うと同田貫様はじろりと私を見てから、…分かったと言ってくれた。

道場に入ってお互い短刀と打刀のサイズの木刀を持つ。
「敵の短刀、ちょこまか動きやがって斬りにくいからな。短刀の奴等に頼む方が良いのかも知れないが、動きが早すぎて話にならねぇし。取り敢えず、あいつらよりは動きは鈍いが短刀の使えるお前が丁度良い。」
そう言いつつ道場の中心で向かい合う。
お互いが位置に着いて呼吸を整え、合図もなしに打ちかかった。
踏み出したとともに下から凪払われた木刀を受け止めその勢いを借りて後ろへ飛ぶ。そこから数回打ち合っていると審神者時代に鍛練をしたときのことを思い出す。突然現れたそれに気を取られた瞬間足をかけられてあっと思う間に転んだ私の首に木刀が突きつけられる。
「…あんた、最後のアレは無いだろ。それとも、やっぱり調子悪いのか？」
心配されるように言われた一言に思わずカッとなった。自分から付き合わせてくれと言った鍛練に集中出来ないとは。恥ずかしくて頬に血が上った。
カン、と音がして無意識の内に握った短刀が同田貫様の木刀を弾いていた。
「あ…、すみません。」
「別に良い。続けるか。」
位置に着き、頭をクリアにして深く息をする。春のしんとした夜気が隅々に行き渡る。
とん、と地面を蹴って同田貫様に近付く。首の辺りを狙ったのは屈まれてかわされる。その体勢のまま下からやって来た木刀に自分のを当てそのまま持ち上げられるようにして同田貫様の上で前宙を切り振り返りざまその首に木刀を当てた。

考えよう、出来る限り。

それだけ思った。