昔々あるところに ページ24
「おう、菖蒲。来たか。」
そう言って、鶴丸様は私を部屋に招き入れる。
「何か、ありましたか？」
「あぁ、部屋に呼び出しっていうとそういう意味に取られても仕方ないが、なに今日はただ単に菓子でも食べつつ昔話をしようと思ったんだが…。迷惑だったか？」
「いえ、そんなことはないです。因みに何についてのお話でしょうか。」
茶飲み話なら鶴丸様は私じゃなくて三日月様や伊達の皆様とするだろう。わざわざ私に話すっていうことは、多分柳星様に関わることだ。
「そうだな、…この本丸についてだ。
前の主がいた頃の。大体2、3年くらい前になる。」
「！ …それは、是非お聞きしたいです。」
「よし。じゃあ俺が顕現した頃から話始めるぞ。」
彼が驚くべきことに本丸で最初に鍛刀された太刀だったこと。
本丸でやった色々な催し物。
悪戯を仕掛けて長谷部と審神者に追いかけられたこと。
終わりに近づくにつれて審神者はあまり話に登場しなくなっていく。何故か現世に長期間留まるようになった審神者は
ある日、本丸から消えた──。
「と、いうわけだ。」
「審神者様は何か書き置きとかを残されていかなかったのですか？」
「…何も。」
僅かに開いた障子から夕陽の傾く庭をぼうっと見ている鶴丸様は消えた審神者様を探すように視線を動かした。
不意にその視線が私の視線とぶつかる。
「…なぁ、この話何処かで聞いたことはないか。」
「え？」
「本当に、分からないのか…？
この本丸が、誰のものだったのか。」
無意識の内に何処の本丸でも同じようなことが起こってるんだなと流そうとしていたのに気付いた。
鶴丸様の話は丸々私の本丸だった所の思い出だった。
つまり
───それは。
「…それは。」
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作者名：きつね | 作成日時：2018年10月31日 20時
