元私の本丸参の巻 (ページ22)

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思い出ページ22

「仕事…仕事…。」
「ワーカーホリックというやつか？」
「そういうのじゃないですけど…。」
仕事はやらなきゃ終わらないんですよ、カテキンマン。心のなかで隣に座る鶯丸様に付け加える。それに、仕事をやってないと何となく立場が無いような気がするのもある。勿論、そんな風に扱われたことはないし、自分の居場所が少なくなるってことは柳星様だけで本丸が回せているってことだから喜ばしいことなのだけれども…。
どうにもならないな、と大きく溜め息をつくと同時に三日月様が見えた。危なっかしい歩き方で此方に向かってきてはらはらする。

「うん、今日は無事に運べたな。」
「今日はって、いつもは無事じゃないんですか…。」
「三日月は月に二回の割合で湯呑みを割って燭台切に起こられているぞ。」
「さいですか…。」
何となくがっくりしつつお茶とお茶請けを受け取る。あ、と声が零れた。
「松風…。」
それは数週間前に柳星様の部屋で見たあのお菓子だった。
三日月様の姿が誰かにダブる。

そうだ、私がまだ主だった頃。

『その菓子、表は趣があるが裏を見ると何にもなくて寂しいだろう？裏がうら寂しい。そしてうらから浦に転じて、浦と寂しとよく用いられる言葉が松風。だから、この菓子の名は松風というらしいぞ。店で不意に思い出して買ってしまった！』

そういって隣でニカッと笑うのは誰だったか…？

あっ、と再び声が出た。

思い出した。

私の本丸の鶴丸国永だ。