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「あ、君ってさ。次席入学の…。」
「え、あぁ。はい。松村Aです。」
目の前にいるのは、阿部さん。
彼は、首席入学した人。
絶対に負けてないと思った入学試験は彼に唯一負けた。
勉強において人に負けるという行為が許せなかった当時1年生の私はどうしても彼に負けたことが許せなかった。
両親に次席だったことを伝えた時に言われた
"Aには失望した"
たったそれだけの言葉のせいで、私の努力は無意味だった。と言われているようだった。
「この講義取ってたんだね。」
「まあ、うちの学部だとほぼ必修科目みたいなものなので。」
「Aさんは、法学部…だっけ。」
ろくに会話もせず私これで失礼します。とだけ阿部さんに声を掛け空きコマの暇潰しをしようと図書館に行った。
ここには私の好きなものが詰まっている。
今日は三限空きの四限終わりだ。
図書館でふと目に入った小説を手に取った。
"博士の愛した数式"と呼ばれる本は文系の私には到底理解ができるのか分からない。
だけど何故か心に惹かれた。
「友愛数って知ってる？」
「わっ、阿部さん。」
先程別れたばかりなのに、私の真横には阿部さんが立っていてまるで私がここに居るのを知ってたかのように話す。
「友愛数って、約数の和がお互いに同じになるやつですよね？」
「その通り。Aさんは、どうでもいいって思うかもしれないんだけどね、俺の受験番号2620だったの」
「はあ…。それがどうかしました？」
「Aさんの受験番号っていくつか覚えてる？」
「…2924だったような気がしますけど。」
合格発表の日何度も唱えた番号だ。忘れるはずもない。
番号がないなんて思っていた訳ではない。あるに決まってるそう思っていた、だけど失敗は許されない私にとってあの瞬間はプレッシャーでしか無かった。
「2620と2924は友愛数なんだ。まるでこの小説に出てくる博士と私と同じように。まあこの小説に出てくる友愛数は数が違うけどね。」
楽しそうに話す阿部さん。
「首席と次席が友愛数なんて残酷ですね。」
「なんで？いいじゃん。俺ら友愛数で繋がってるんだよ。」
この日と真面目に見せて本当はロマンチストなのかもしれない。
「ごめん、面倒だよね。俺いつもこうなんだ。数学の話になると盛り上がっちゃうというか。」
「そんなに楽しそうに数字の話する人初めてです。」
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作者名：はる | 作成日時：2021年3月20日 16時
