Cupid (ページ4)

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この言葉に偽りは無かった。

教育学部の阿部さんは将来数学教師になるらしい。
彼もまた親の期待というものがある。と言っていた。

だけど、それ以上に自分の好きなことを研究したいという気持ちも持っているらしく外部の研究室に入り大学院に進むかと悩んでいる。

とまで話していた。

彼は私よりも何もかもが大人だ。

同い年には思えない。

今現在の考え方も、将来についても。

父親が弁護士だから。それは生まれた時から決められている。

そんな理由でただ親の言われた通りに勉強して法科大学院にすすみ司法試験受けて弁護士という肩書きを手に入れる

それが私の生まれた時から決められた人生のルートだ。

「Aさんは、弁護士…？」

私が手に持っている参考書にはまだ何年も先に受けるはずの司法試験の問題集だった。

彼はそれを見てきっと私にそう声をかけた。

「あぁ、お父さんが弁護士で。親の敷いたレールを走ってるだけです。」

「それで、弁護士か。僕とは違うね」

阿部さんも受ける試験は国家試験のようなもの。

倍率は馬鹿にならないし、教員採用試験は教師を目指す者の避けられない道。

「ふっか…さん？に勉強教えたんでしたっけ。」

「あれ、Aさんふっかと知り合い？授業が同じだよね。」

「いえ、彼ら必ず私の特等席の後ろに座るので話し声が聞こえるんです。その時そんなこと言ってたような、」

結局阿部さんは彼らに本当に勉強を教えてたのかは分からなかった。

そして、一つだけ嘘をついた。

確かに最初は聞こえてしまったの方が正しかったが、先程も思ったように今となっては、将来役に立たない講義なんて聞いてられず彼らの話をわざわざ聞き耳を立てている。

「あ、そっか。あいつら煩いよね。Aさんも俺の隣とかに座る？静かだよ。」

「今の席…好きなんです。」

色んな意味で。

確かに煩いけど、別にあの席に座ってようとあの授業は私にとって合っても無くても変わらないもの。

ただ卒業する為には受けなければならないってだけで。

「阿部さんは、仲良いんですね。あの人たちと。」

「高校の頃からの腐れ縁ってやつかな。部活も一緒でさ。」

「部活が…。」

「そ、ダンス部なんだけどあの席に座ってるメンバーと佐久間って奴も居るんだよね、まあ佐久間はあの授業取ってないからあそこにはいないけど。」

心から羨ましいと思ってしまった。