のぼせ ページ7
乳白色のお湯が張られた浴槽にもたれかかる。
木独特の香りと、入浴剤の花の香り。
浴槽の上数センチから天井まで届く大きな窓から裏庭をのぞく。
庭を囲むように立つ針葉樹、もみの木や夏にはたくさん実をつける果実の木に雪が積もっている。
銀世界を３階のお風呂から眺める。
暖かいお湯と寒い外。
安心感と独り。
人間と吸血鬼。
レギュラスと私。
くるくるとたくさんの単語が脳内を駆け巡る。
ーーーーーー
のぼせて目が回っている私は呆れ顔のレギュラスのなすがままにされていた。
紺のパジャマを着せられて、幾分か乾かすのが楽になった髪に温風を当てる。
浮遊感を覚えたのちにベットに沈み込む。
室温の水を３口ほどのめば、額に冷たいタオルが置かれる。
『けっきょく、昨日の夜といっしょですね』
発した言葉は少し舌足らずであった。
目まで覆うタオルが頭に登った血をゆっくりと元のように循環させる。
「風邪引いてるのに長いこと入ってるからですよ」
久しぶりの家のお風呂が嬉しくてつい長く入ってしまっていた…
なんて今更後悔しても遅い。
…気分が悪い
長い溜息を吐く。
遠ざかる彼の気配。
いたであろう場所に手を伸ばしても空を切るだけ。
『レギュ』
思ったよりか細い声に自分でも少し驚く。
疲れと不安感が前面に出ている震えるような声。
「用意したらすぐ戻ってきます。
少しだけ、待っていてください」
静かにドアが閉められた。
私の少し荒い息と窓の外から聞こえる風の音以外は静かなものである。
胃の気持ち悪さを感じて未だ覚束ない足でバスルームを目指す。
ーーーーーー
「…A？」
水道から流れる冷たい水で口をゆすいで顔を洗っていれば、姿が見えなかった為うろたえたような声のレギュラスがバスルームに入ってきた。
洗面器に手をついて横目に彼を見る。
バスルームの電気が眩しくて髪の毛でシャットアウトするように俯いていたら、察してくれたのか彼は電気の出力を抑えてくれた。
疼くように痛む頭は同時に平衡感覚を失ってぐるぐると回り続ける。
なんども吐き気を催してぺたりと冷たい床に座り込んでしまった。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年1月10日 2時
