一息 ページ40
広間に入るとレギュラスがこちらによってきた。
クラウチ氏と話しているのを見ていたのか、特に何も聞かずに温風魔法で私の体を温めてくれる。
手を取られドラコの後ろ姿が見える方へと引っ張られる。
「遅かったな、A」
くるりと上半身をこちらへ向けて彼はそういった。
手には暖かそうなミルクティーが入ったマグカップが置いてある。
いつもは繊細なティーカップでしか飲まないのだが、今日の試合で手が冷えたのだろう。
マグカップに指が添えられて、少しも離そうとはしなかった。
『えぇ、ちょっと話をしていたもので。
私も暖かいコーヒーでも頼もうかな…』
そう呟けばパッと現れるマグカップには透き通るこげ茶が入っていた。
隣に添えられている砂糖とミルクを全て入れて、同時に出されたクッキーを手に取る。
「…コーヒーと言うよりそれは最早暖かいコーヒー牛乳よね？」
パンジーがちょっと呆れ顔で私に聞いた。
まぁ、確かにそうではある…普段ならブラックで飲むときはあるけれど、今日は甘ったるいのが飲みたい気分だった。
『いやー、たまにあまーいコーヒー飲みたくなりません？』
今日は後ろでお団子にしているダフネが首を少し傾げた。
耳元の後れ毛が少し揺れる。
「私コーヒーは一回しか飲んだことないかな…
基本紅茶しか飲まないから」
さすがは紅茶大国グレートブリテン、魔法界の貴族である。
マグカップを両手で持ってちびりと中身を口に含み、口角についたそれをペロリと舐めた。
「コーヒーは眠気覚ましに効くと言われているが、私はストレートの紅茶の方が好みだな。
あれは苦くて好きではないな…」
よほど気に入らなかったのかあまり表情を変えないミリセントの眉間に少しシワがよった。
私たちの真ん中に置いてある大皿のハート形のパイに砂糖をコーティングしたもの、パルミエを手に取った。
甘くてサクサクのそれは一度食べ始めたら終わり…と言われるほど一部の生徒からは"麻薬"扱いされている。
確かに私もそのお菓子に手を出し続け、執務室にこもって体を動かしていずに一週間経った時には数キロほど増えていた…
恐ろしや…パルミエ…
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年1月10日 2時
