図書室 ページ3
私の部屋からさるレギュラスの背を見ながら、私は小さくため息を吐いた。
少し息苦しかった最後の話題を終えたら少し疲れてしまったのか、頭が枕に沈む。
誰にも…いや、主にレギュラスにそんな情報を与えてはいけない。
そんなことを知ったら彼は私に身を捧げるだろう。
吸血鬼の本能でパートナーを縛り付けるのだから解決法なんてない。
せいぜい体力、魔力と血を温存するくらいだ。
先人はどうやっていきていたのか…
思い立ったが吉日、シワひとつないシャツに袖を通し、ハイウエストのロングスカートを履く。
パーティーの所為で疲れた足を労わろうとエナメルの可愛いフラットシューズを取り出す。
服装をちゃんとすればしゃっきりするものだなぁと思いながら音を立てないようにそろりと部屋のドアを開け、廊下の突き当たりにある私の書斎兼図書室に向かう。
２階にある私の寝室とつながっているそこは、大量の本が棚に収まっている。３階まで吹き抜けの図書室兼書斎は実に楽しい。
ハシゴに登り、棚を吟味し、持ち降りる。
綺麗な革表紙に金の模様が入ったものから、崩れそうな紙の束まで。
ガラスケースに入って飾られているものもあれば床に積み上げられているもの。
多種多様の本が私の心を踊らせる。
知識を得るというのは楽しい。
あの狭い世界から助け出してくれたお父様にはどんな感謝の言葉も到底たりはしないだろう。
古いお父様の日記、家系図やらディヴィン家、つまり天羽の名になる前の記録を掘り出す。
魔法が使えないから手で持つのは面倒くさいが背に腹は変えられない。
『流石に本が多すぎますって…』
数冊の本を分けて持つ。
奥まったところにある棚の上の方はすべてこの家に関することだった。
いくつかは目にしたことはあるが古い文書はまだ読んだことがない。
掠れた表紙のものや、明らかに古そうな本だけを選んで床に置く。
…それにしても広い図書室の両極端にある棚と机…運ぶのには骨が折れそうだ
ーーーーーー
数度上り下りしていると、やっと最後の数冊にたどり着いた。
上の方にあるそれは地上から数メートルの高さで流石の私でもハシゴ一つで登るのは怖い。
「Aさん」
下から聞こえたフィニの声にびっくりする。
ビクッと体が一瞬硬直し、梯子が揺れて重心が後ろに傾いてしまった。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年1月10日 2時
