変化 ページ4
雲が突然切れて、ぼんやりと月の光が私たちを照らす。
満月の光のおかげか、私の魔力も少しずつ回復するのを感じる。
それと同時に、リーマスは硬直し、後悔の表情をあらわにしていた。
そう、私と逆なのだった。
「逃げろ！」
シリウスはリーマスを羽交い絞めしながらハリーたちに叫んだ。
もちろん、彼らはピーターにつながれたロンを置いて逃げることなどできず、こちらへ向かってくる。
私は落ちている小石を拾い、力を込めて手錠に飛ばして砕く。
手錠から解放された反動でロンは転んだが、ハリーに助け起こされて数メートル下がった。
『リーマス、落ち着いて。
自分を見失わないで！』
騒ぎに乗じて、ピーター視界の端で縮んでいくような気がした。
無意識に舌打ちをしてしまう。
「A、無理をするな。
ハリーたちを連れて逃げろ！」
そういうシリウスだが、このままだとリーマスに押し負けるのも時間の問題。
それに、人狼を野放しにするのはあまりに危険だ。
この前助けてくれた時の恩返し…というわけではないができるだけ封じ込めようと私は必死に魔力を消費する。魔力で物理の力を押さえつけるというのは効率が悪いにもほどがある。
押し返される大きな力に勝つすべはない。
『ハリー
逃げて！』
封じ込めようとする術も跳ね返され、私はリーマスの腕に吹っ飛ばされる。
お腹に入った腕が色々とかき回す。
肺が押しつぶされそう。
のど元にいろいろとこみあげてくる…
『うぐ…』
大したものが入っていない胃からは吐瀉物、胃液が口から流れ出る。
お腹にできたであろう赤い跡に手を添え、咳をしながら私は再び立ち上がった。
パン、とはじける音とともに復活したらしいレギュラスとセブルスの姿が現れる。
レギュラスは崩れそうになる私の体を支え、セブルスは立ち上がるリーマスを前に、ハリーたちを背後にかばった。
『…シリウス！』
遠くの草むらで犬がキャンキャンと甲高い声で鳴くのが聞こえ、ハリーが飛び出していく。
私は野原に座り込んだ。
ぜーぜーと息をする私をレギュラスはきつく、でも潰れない程度に抱きしめた。
「ゆっくり吐いて、ゆっくりです。」
いつもの優しい声に戻ったレギュラスに安心したのか、体の力が抜ける。
『ハリーを、たすけて、あげて』
意識が途切れる前に聞こえたのはレギュラスの、はい、の一言だった。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2017年9月8日 7時
