吸血鬼 ページ38
「一休みしようか、一通り片付いたようだし。」
セドリックは持ってきた荷物の中の紅茶を取り出した。
前の村のお姉様方に餞別としていただいたらしい。カップはないので、そこらの木材を"フェラヴェルト"して、お湯は"アグアメンティ"と"インセンディオ"。
魔法が使えれば案外どうにでもなるものである。
『このケーキもとても…』
もぐもぐと欲望の赴くままに甘いバタークリームの乗ったカップケーキを食べる。
ダイレクトにエネルギーに変わる糖分を欲しているのかなんなのか、無性に甘いものが食べたくなるらしい。
私の食べている姿をチラリと見ながら、彼は紅茶を手にとった。
「Aは、死喰い人の会議…にはまだ出席しているんだよね？」
『えぇ、残念ながら産前休業なる言葉はあの人の辞書には乗っていないらしく…出席しなければいけなさそうですね。』
レギュラスをホグワーツに遠ざけているのでそこまで問題はなさそうだけれど。
…次に被害を被りそうなのはドラコかセドリックかな。吸血衝動が抑えられなくなっても普通の献血程度の量で治ると思うしまだマシだろう。
それに、私側で何かサポートをする時にこちら側の情報を知っていた方が明らかに役に立つ。
不死鳥の騎士団の方はたまにレナさんやアルさんから情報が入る。もちろん、全てというわけにはいかない。マッド・アイが死んでからというものの情報規制はかなりかけられている。
「…僕も、同行していいかな。
もちろんセドリックのままでなく、別の誰かとして。」
彼はテーブルにカップを置いて、私の目をまっすぐ見てそう言った。
僕が決めたことだと、心配はしないでほしいと言いたげだ。
『幹部会議には流石に連れていけませんよ？』
「もちろん。
君が拾った吸血鬼の捨て駒とでも言っておけばいい。」
それはいっそのことならば吸血鬼として生きた方がこれから有利だという意味だろうか。
…解釈違いであればどれほどのエゴイストになるのかと、一瞬聞くことを躊躇ってしまう。
「僕を、吸血鬼にしてほしい。」
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
