タブレット ページ30
とはいえども、そう簡単に私は会議から逃れることはできずに血生臭いそれに参加させられている。
鼻をかすめる鉄の匂いはいつの間にか私の空腹を強調させるようで、頭がぼーっとしてくる。
どこの誰の血かもわからないのにこうも節操ないとは…吸血鬼の体というのはつくづく不思議なものだ。
好きな人ができたらその人の血に惹かれ、嫌いな人の血を受け入れづらくなる。
かと思いきや子供ができれば、ただただ鉄の匂いがする液体としか見えていなかった友人の血に、果てには赤の他人にまで空腹感を覚えるとは。
「聞いているのか、A？」
テーブルの木目をなぞっていれば右側からあの人の声が聞こえてくる。
『えぇ、もちろんです。
私はこの家で後方支援として待機でしょう？
シシーさん、ベラさん、ルシウスさん、ドラコと共に。』
わかっているのならいいが、と彼はない眉を潜めて他の死喰い人に向き直り指令を出す。
「そしてお前、レギュラスはもう知っているとは思うが…セブルスと共にホグワーツで教師ごっこをしてこい。」
「僕、一度も学校を卒業していませんけれど、それでもですか？」
私の後ろに立つ彼は小さくため息を吐いて、命令を出した本人にそう言った。
「お前の能力はお偉い先生方の能力より高い、俺様はそう思ったのだが。」
少し皮肉めいた口調でその人はそう言い放ち、そうでないならばもう興味はないがと言わんばかりにふいと目線を逸らした。
なお、レギュラスはそう言われてしまうと逆に火がつくタイプであるため彼は小さく一言、引き受けました、と呟いた。
ーーーーーー
それほどスプラッタでなかった会議は終わり、私は再び自室へと戻って行った。
しょうがないので吸血鬼の間で開発されている血のタブレットやらを噛み砕きながらソファーの上で寛ぐ。
あまりにも味気がない。
一般に出回っているものは動物の血が混ざっていたりする粗悪品だったりするのでわざわざ純度１００％の人間のそれで作らせたのだけれど…それでもこれは美味しくない。
よくわからないけれど、形容するならば硬すぎて味がしなくなった犬のガムのような。それも元々は化学調味料の味がしたような後味がする。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
