次の指令 ページ25
「こんばんは、ドラコ。
貴方はこっち側の配属だったんですね」
レギュラスは燃え上がる天幕を眺めながら呑気そうにそう言った。
多分本気で驚いているとか、そういうのではないと思うけれど…なんだかそんな芝居がかった雰囲気に私はため息を吐きそうになった。
「…魔法省へは、流石に幹部組が行ったさ。」
『ま、連れて行ったのは昔からの腹心だけ、と言ったところでしょうね。
魔法省の作戦が失敗すれば痛手でしょうし。』
散らかされた花束、残されたウエディングケーキ、呪文の跡…
私は倒された椅子の間を縫ってデザートが置かれているテーブルの前に立つ。
チェリーやベリーがたっぷりと入ったヨーグルトムースをお行儀悪く指ですくって食べる。
甘酸っぱい。
…美味しいなぁ…
なんだか最近無性に甘いものが食べたくなる。
『わざわざ会いにきたっていうことは、何か伝えることでもあるのでは？』
ポタリとベリーのソースがドレスに落ちて、赤い花を咲かせる。
なんだかそれもどうでもいい気がしてきて…なんなんだこの妙な感覚は。
「あ、あぁ…
レギュラスは引き続きスネイプと共に学校へ。Aと僕は追って指令を出すそうだ。」
「僕とAを引き離そうって話ですか…」
全く、とレギュラスはドラコの話を聞いてため息を吐いた。
「よくわからない。が、おそらく母上と父上の精神安定剤、みたいな使われかたかと思う。
二人はAのことを信頼しておられるし…」
その彼の物言いに私は失礼ながら吹き出してしまう。
精神安定剤…自分の精神すら完全に支配できていないというのに薬扱いとは。
「そもそも僕はAのいいつけしか聞かないと言ってあるはずでは？」
レギュラスは納得がいかないようにそう言った。
確かに、死喰い人だと示す印が腕に入ってはいても、彼はほとんど私直属の部下のような扱いだ。それもあの人の力が及ばないところにある。
ただそんなことを言ってられたのも私の力が…いや、魔法省が落ちた今、またあそこでの権力を取り戻せるのでは？
『話をしてから決めましょう。
とりあえず貴方は教師側か生徒側かは知りませんけれど新学期からホグワーツへ向かってください。』
お願いしますね、と彼の目をまっすぐ見てそういえば、少し不服そうに頷いた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
