朝 ページ19
屋敷のいくつかはもう二束三文の値段で貸しに出す。逆に詐欺だとおもわれそうな値段ぎりぎりを責めている。
不動産を介しているから私達に何かがあったとしても自動的にお金が入るし、メンテナンスもやってくれることになっている。
今日はフラーとビルの結婚式だ。
ロックハートに作ってもらったふんわりとしたドレスを身に纏う。
膝丈の桜色のドレスはガーゼのように軽いシルクでできている。
「これでいいですか？」
レギュラスはグレーのリネンのスーツに庭で摘んだピンクや白のバラをきれいにまとめて持ってきた。
さすが育ちが良いからかセンスも良い。(よく考えたらブラック家の家具は気味が悪いのが多いけれど)
『えぇ、ありがとうございますレギュラス。
とっても綺麗。きっとフラーも喜んでくれるはず。』
彼は頷いて薔薇の花束を木のテーブルの上においた。
そのまま私の髪の毛をするりと空いて、リップ音が聞こえてくる。
「髪の毛は、下ろしたままですか？」
『んー…昨日の跡が消えてないんですよ。』
このくらいの内出血だったら寝たら消えそうなものだけれど。
吸血鬼の回復能力は劣化しているのかどうもいまいちだ。
切り傷やら軽い骨折を治す呪文はあるけれど、内出血を消すのはファンデーションの役目だ。
と思って髪の毛を下ろすことにしたのだ。
幸い４年生のときのダンスパーティーの時から伸ばしていてそれなりに隠れるし。
「噛み跡が消えてるからですかね。
内出血まで回らなかったのかも。」
…噛み跡なら治せるから付けようと思ったのか…
全くもう。
『今度用事のある前日に花咲かせたらかじりますからね。』
彼がテーブルの上に放置していた杖を振ってブーケを用意していたリボンやらで飾り付けをして、作ったタルトやらをカゴに入れていく。
レギュラス作のとっても手の込んだベリーのタルトは、さくらんぼの位置からゼリーの色まで全てが計算し尽くされた逸品となっていて、とりあえず美しい。
きっと７年前にこれをレギュラスが作れることになるだろうなんて誰も信じなかったに違いない。あの料理壊滅な彼が、これを？と。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
