陽動 ページ12
『私が真ん中を突っ切って陽動します。
お二人は他の人の援護を！』
雲の上に出ればそこはすでに死喰い人だらけだった。
箒で飛び回り呪文を連発するもの、幹部に近いのか箒なしでぐるぐると飛んでいるもの。
とりあえず私達は護衛の護衛。
最初は私だと気づかれぬようにフードを深く被りながら普通の魔力の方を指先から撃ち出していく。
いかにもマグルの子供がピストルの真似をしているようだ。
「私は右のほうに行ってくる。アル、バイクが狙われてる！」
彼女は箒の上で身を縮めて空気抵抗を最小限にして右にそれて行った。
落ちるような速度で右の戦場へと。
私はというと数人の死喰い人の周りをうろちょろして、少し上の雲を突っ切ってさらに登っていく。
星空が綺麗だ。半月が私を照らす。
『ごめんなさい、皆さん。
人間を助けるために人間を殺すというのは、本末転倒感を感じるのですが…人数で測ればこうも言ってられないのです。』
右手の人差し指に噛み付いて、血がとぷりと出てくる。
手の上でくるくると円を描くそれを数百に分離させて、それぞれをピックの形に整形させる。
それらを誘導するようにぴっと敵の頭に指を指して、飛ばす。
綺麗に命中したピックはそのまま消えて、私の元へと戻ってくる。
敵は自身が攻撃された事を理解せぬうちに絶命して、箒からぐらりと落ちていった。
撒き散らされた血の匂いは私の鼻を刺激する。
ひどい匂いだ。
ーーーーーー
「良かった無事だね」
アルさんは一度引いたのか私がいる方へと戻ってきた。
服が少し切れているけれど、血の匂いはしない。
気もそぞろに頷いて、周りを見渡す。
どこかでセブルスの気配がする。
そして…
心臓を鷲掴みにされたような、痛み。
肺が押しつぶされて空気が抜けていくような、心臓を殴られてぐちゃぐちゃに切り裂かれたような。
街の方を見やれば停電しているのか消えていく家の電気。
ハリーが…あの人を電柱にぶつけたのか。
それでこの感情の荒ぶりようとは…
落ちそうになる私を彼は支え起こす。
『ここから隠れ穴はもう直ぐです。
早く向かいましょう…死喰い人の様子からして、もうこの辺りには私たち以外はいないようですから。』
汗ばんだ手で箒の柄を掴みなおす。
ゆっくりと深呼吸をして、あの人とのつながりを断ち切る。
遠くで匂う、マッドアイの血に私は胸が締め付けられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやにゃん | 作成日時：2020年5月5日 2時
