疑心 ページ38
それからも一つ一つ答え合わせが始まった。
ダンブルドア先生に聞かされたこと、戦闘中に気がついたこと、今まで私たちが要所要所で漏らしてきたこと。
「…どうして、そこまで準備できたなら…シリウスを助けるどころか、自分で手にかけて
レギュラス！」
ハリーは納得いかないと、私の隣で死んだ目をしているレギュラスの胸ぐらにつかみかかった。
ハーマイオニーが慌てて止めようとするも、レギュラスの目を見て一瞬怯んでしまったようだ。
生ける屍のような状態のレギュラスにハリーも糾弾するのは阻まれたのか、グッと掴んだまま動かなくなってしまった。
どうして、なんで、独り言のようにボロボロと漏れ出す悲痛な声に良心が痛む。
もちろん、助けれるならば助けたかった。
でも、これからのことを視野に入れると、彼を私たちが手にかけることで獲れるしっかりとした立場、土台の方が重要だったのだ。
世界の安寧を守るためだなんて大層なことは言えない。
ただただ、私が愛した人たちが住むこの世界を破壊されないように、被害を最小限に止めるために、どうしても犠牲は必要で。
もちろんならどうして私が生贄にならなかったのか。それは今ここで死ぬより、もう少し後に自爆テロのようにして巻き込む方が今後の未来が明るくなる計算だからである。
少なくとも合理性を極めたらこんな結論に至る。
幸いにももはや狂気に至ったレギュラスが提案した策、シナリオ通りにあの戦いは終わった。
もちろんそんなこと、どうしてハリーに言えよう。
どうして、唯一と言っていい家族を殺した私が、未来に生きるだろう誰でもないあなた達の、そして子孫のためだといえよう。
どうして第一次魔法大戦の時にあの人の存在を消してしまえなかった私が、言い訳なんて言えよう。
『ハリー、レギュラスを責めるなら、私を責めてください。
手を下したのは彼かもしれませんけど…こうなるに至ったのは私の失敗がたくさん積み重なったことにあるんです。』
レギュラスのシャツをくしゃくしゃにつかんでいた手をそっと離れさせ、私の前に持って来させた。
どうぞ、気が済むなら殴ってください、そう言えばハリーはグッと拳を握り振り上げたところで震え出した。
「Aを…殴れるわけ、ないだろ…」
彼はだらんと右腕を重力に任せて落として俯いて、静かに涙を流し始めてしまった。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
