断罪 ページ36
不死鳥を象った炎の塊をもろに浴びて、もちろん私でも無事に済むことはなかった。
幸いにも自分自身が燃え上がることはなかったものの、防御で反応が遅れた私は次の攻撃に対応できずにそのまま縛り上げられてしまった。
目の前がチカチカして身動きを取れずにいたらすぐさまレギュラスが駆けつけてインカーセラスを無力化してくれたようだが、その時にはすでに気を失っている死喰い人以外この間には居なかった。
「あぁ、Aこんなに怪我をして…」
深い漆黒の瞳に一筋の光も宿らせずに、レギュラスは私の顔を覗き込む。
頬の切り傷にそっとキスを落とされ、治癒される。
『レギュラスこそ、マッドアイだかトンクスに一撃喰らってたでしょう…』
シャツのボタンを撫でて魔法で開かせ、彼のお腹にできている大きなあざに手を触れる。
軽く触れただけでも痛いのか顔をしかめさせた彼に、手の傷から流れる血をつければたちまち外傷は消えたように見えた。
遠くの入り口ホールで聞こえていた絶叫も、爆発音も、高笑いの声も、全ていつの間にか聞こえなくなっていた。
偽装のために用意しておいたボロボロになった私服に着替えて、ゆっくりと立ち上がる。
そこら辺に転がっている死喰い人を一か所に集めて縛り上げる。
私を見られたり利かれたりすると面倒なので"マフリアート、耳塞ぎ"と彼らの服を切り裂いて目の周りにきつく縛っておいた。
ヒョコヒョコと表へと出ていけば、ちょうど魔法省に出勤してきた魔法大臣と、並びに重役の方達がホールの惨事を目にしているところだった。
噴水は砕け、周りの窓ガラスは全て粉々で、もはや砂状態。
至る所に血だらけの人は落ちているしで大臣でさえも困惑しているようだ。
『ねぇ、レギュラス』
「はい」
彼は野次馬の方をじっと見ながら相槌を打った。
だからと言って、ちゃんと聞いてる意思が籠った言葉だ。
『これからも大変そうですね。』
「えぇ、きっと今までの人生を一年に圧縮しても足りないくらいでしょうよ。」
話しかけたのは私だというのに、出たのはそんな言葉だった。
そんな私の中の戸惑いを、彼の方がぐちゃぐちゃだろうに、察してくれて、私を正面から覆いかぶさるようにぎゅっと、きつく抱きしめた。
染みるような痛みが今は、断罪のようで、心地よかった。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
