呪い ページ26
二人と、近くにいたレギュラスに引っ張られて私は城の中にもどった。
入ってすぐの階段に座っていれば、同じく顔を真っ青にしたハリーがハーマイオニーとロンに連れられて中に入ってくる。
「Aも、もしかして…」
息も絶え絶えになったハリーは私の状態を見てそう問うた。
できればそうでなかったら嬉しい、とそんな希望を交えた声だ。
『…でも、これは』
罠です、ただの幻覚ですと言おうとすれば、声は出ずにカスカスと空気の漏れる音がした。
なんてことだ…自分でかけた、他人に漏らさない様にする魔法が仇になるなんて。
ここでハリー達を向かわせたら、話の通りに進んだら…シリウスは確実に死ぬことになるだろう。
私は、死喰い人としてあの方側に付かなければいけない。
「ごめん、少し失礼するよ」
シユウ先輩は私の額に指を当てた。
じわりとそこから彼女の、なんだか和むような魔力が流れ込んでくる。
…おんなじ日本の血を引いているからなのか、相性がいいのか…
１秒もせずに彼女の手は離れた。
「今、磔の呪いを受けていたのは誰…？」
彼女は眉間にシワを寄せてそう聞いた。
心を覗かれた感覚がなかった。１秒もしない接触だったにも関わらず。
彼女は私がついさっき見た光景だけを、正確に見た。
「シユウの名前だよ、A。」
困惑して答えない私にリーはそう言った。
しゆう…心結
心を結ぶ…
名前は一番簡単で、でも強固な魔法で、呪いだ。
だから彼女は心と心を繋ぐのが得意で、記憶を読むこともコントロールが効くから余計なものを見ずに済むうえに、気づかれにくい。
ここでごまかすのもおかしな話だ。
それに、私の心をピンポイントで覗き見れるほどの能力なのだから、ごまかされるとも思えない。
『レギュラスの、お兄様…です』
そう素直に答えれば、隣に座るレギュラスはキッと私を睨みつけた。
なんで言ったのか、と。
シユウ先輩の刺さる様な視線を受けるレギュラスは諦めた様にため息を吐いて、険しい表情を緩める。
「えぇ、僕の兄です。
でも、これはっ…」
はくはくと動く口からは音が出ない。
私と一緒で、彼からも真実が告げられない。
二人して制限がかかっているこの状況にハーマイオニーは顔をしかめる。
「どうして、二人とも情報制限の呪いがかかっているの？」
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
