ケンタウルス ページ22
『マゴリアン、ロナン、ベイン
お久しぶりです。』
OWL試験前最後の日曜日。
５年生と７年生は図書館に閉じこもる日、私は一人ローブを纏って禁じられた森に入った。
案外ここには侵入者を知らせる結界が張っておらず、アンブリッジに即通報になるわけではなさそうだ。もちろん、誰かが見ていたらアウトだけど。
魔法省の仕事用でも、学校のローブでもない、昔高等魔法生物が集まって会議をした時に来ていたもの。
相当古いものではあるけれど、いい素材で作らせたからかくたびれているどころか未だ新品のようだ。流石に言い過ぎかもしれんが。
「あぁ、そうだな。吸血鬼よ」
リーダー格のマゴリアンがその黒髪を揺らして近づいてきた。
上半身は筋肉がついた人間、下半身は野原をかける力強い馬のもの。
最近はレギュラスの血しか吸えないから私とこうやってあってくれるものの…多分普通の吸血鬼であれば会おうともしてくれなかっただろう。少なくとも公式の、安全が保障された場でなければ。
居心地は良くないものの、ここで押し負けていては管理者としての立場が危うくなる。
「で、伝えたい話とは？」
ベインはマゴリアン以上の苛立ちをあらわにしながらそう問うた。
能力はケンタウルスの中でも高く、それと同じくらい誇り高く、人間を好いていない。
もちろん、私もあまり歓迎されていない者の内の一人である。
『魔法省についてです。
諸々の元凶であるドローレス＝ジェーン・アンブリッジ魔法大臣付上級次官をこの学園から追放すべき時がやってきます。』
ロナンはあのピンクフリフリを見たことがあるのか、嫌そうに顔をしかめた。
ガシガシとその赤毛をかいて、こちらに二歩三歩よってくる。一歩が大きいので距離的には私から２mの場所に立っている。
「それはいつのことかな？」
『明後日。
夕方から日が沈むまでの間にアンブリッジは必ずこの森にやってきます。』
後ろの方に控えているケンタウルス達はざわついて話始めた。
そりゃあ、突然目の敵にしている人物がやってくるなどと言う情報が流れてきたら変に思うだろう。
こいつは、その情報を流して何を期待しているのか、と。
頭を下げて、踵を返して再び城を目指す。
途中でローブを脱いで検知不可能拡大呪文をかけたカバンにそれを放り込んだ。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
