借金 ページ20
「これの悪いところは常に魔力を供給しないといけないと言うところでね…
肩紐のところに二人の髪の毛を織り込んでるから無茶な使い方をしなければ１０年くらいはもつと思うけど。」
悪いところと言いながら普通に使えば１０年持つのであればなんの問題も何のではないのだろうか…
鞄自体にはリーが防水、防火、盾…あらゆる防御呪文をかけていて、もうそこだけ集中攻撃されたとしたら無傷でいられるような性能だ。
普通にお店で作ってもらうのならば…相当な値段がするはずだ。
素材はドラゴンの革。
私が管轄するスコットランドの田舎で亡くなったドラゴンのものだ。鱗を柔らかくしたものを蓋として使っているのでもちろん呪文が破られても最高の性能を誇る逸品だ。
実質０ガリオン、大量の時間と無駄に有能な(無駄とは言っていない)生徒が作り上げた、まぁ卒業制作みたいなものではなかろうか。
『なら私からは二人にこれをあげましょう。』
ローブのポケットから小さな袋を取り出す。
ポチ袋くらいのそれは外側は白蛇の抜け殻、内側は鞄と一緒のドラゴンの皮を薄くして深緑に染めたものだ。
新たな門出を祝して自分で作ってみたものなのでシユウ先輩ほどうまくはないが…そこそこの出来だろう。
「これは…財布かい？
金貨が…」
「え、ちょっと待てよ。
こんなにもらえないって」
律儀に一枚一枚取り出していたがいつの間にか諦めて逆さ向けに財布を振る双子。
それぞれの袋と私を見比べて目をぱちくりさせた。
と言っても、金貨１００枚でハリーが二人に渡した額には満たないけれど少しでも足しになればなぁと思って。
「店はAがダイアゴン横丁で持ってるのを格安で貸してもらうことになってるし…」
「それに在学中の実験代もほとんどA持ちだろ？こんなにしてくれなくても」
焦りで私の呼び方がドールから本名に変わっている。
普段このメンバーで集まるときはドール呼びなので少し新鮮だ。
何も言わずにニコニコと二人を見ていれば何かを諦めたように積み上がった金貨を杖で収納した。
双子は無言のままリーを凝視する。
以心伝心、と言うやつかリーは二人が言わんとすることを察したようでため息をついた。
「なるほど、資格を取ったら俺の初仕事はAに大量の借金を返すことらしい。
流石に骨が折れそうだな。…ちなみに借金総額を聞いても？」
わざとらしく冷静な口調でそう問うたリーは双子に総額を聞くとふざけんな…と両手で目を塞いだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年9月2日 3時
