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ズキッ、と頭が痛む。
「あ、アイリーン様が目を覚まされたわ」
リリアがアイリーンの顔を覗き込んで言う。
辺りを少し見回して、アイリーンは尋ねた。
「これは一体、何の真似かしら?」
手首には鉄の枷がはめられており、そこからのびた鎖は寝台の柱にぐるぐるに巻き付けられている。
粗末だがしっかりと作られた寝台を引きずらないと身動きできない仕様だ。
____アイリーンは寝台に横たえられていた。頭の上に両手首を縛られた格好で。
「アイリーン様、私...さっきのこと許します。私だってまだ整理がつかないんだから。
アイリーン様はもっと混乱して当然ですよね」
もう赤くない頬に手を当てて、リリアが儚げに微笑む。
「これでもアイリーン様を尊敬しているんです。だから一緒に頑張りましょう」
「...第二妃とか一緒にとか、どういうことですの。
わたくしとセドリック様はめでたく婚約解消したはずですわよ」
「そうなんですけど、やっぱり私....嘘や騙し合いばかりの貴族の方とお付き合いするの、
苦手みたいで...アイリーン様はお得意ですよね?助けて欲しいの」
話が読めてきた。
あの夜会の軽率な振る舞いで、リリアの皇妃としての資質_________
ひいてはセドリックの皇太子としての資質が疑問視されたのだろう。
男爵家ではあるが、リリアの実家は大きな力を持っていない。
そのあたりから軽んじられるようになり、彼らは間抜けにもこう考えた。
「....なるほど、あなたの考えそうなことだわ。
皇妃の仕事や煩わしいことは全てわたくしに押し付けて
自分たちは安泰な地位を維持したいと....」
「まさかそんな、ただ誰だって得意不得意が...。」
「いいんだリリア、元より俺はきみを古い慣習に押しこめる気はない」
なんだこの茶番は、ありきたりな恋愛ドラマのワンシーンか。
「まるで子供の反抗期ですわね。皇帝陛下はそれで納得してくださいました?」
リリアとセドリックが言葉をつめる。
「(...するわけないか)」
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