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「いいえ、わたくしは自分の意思で参りました。剣は護身用ですわ。」
声を上げると、スチルが動いた。
現実が動き出したかのようだ。
三者三様の視線が、ソファに横たわっていたアイリーンに突き刺さる。
キースは労りを、ベルゼビュートは分かりやすい警戒と敵意を。
そしてクロードは完璧に感情を押し殺した眼差しを向けた。
クロード・ジャンヌ・エルメイア
セドリック様の異母兄であり、かつてのエルメイア皇太子
聖剣の乙女の言い伝えにある
【赤い目と強大な魔力】を持ち合わせた魔王の生まれ変わり
魔王という存在は、異形の魔物達に愛され、怒りは噴火を起こし、悲しみはやまない雨を降らせる。
彼の心の乱れは自然の法則すら乱す。
覚醒後は巨竜となり森羅万象を司ると言われている。
クロードは幼少期から幾度も暗殺を仕掛けられるも魔物の介入により
人々は強大な力を持つ彼を恐れ迫害した。
十の歳、彼は【人と魔物との相互不可侵】を条件に皇位継承権を返上、王城から廃城へと移り住むこととなり、
現在に至る...と
そしてゲームでは大体のルートにおいて彼は覚醒し、ラスボスとなる。
あるエンドでは国を滅ぼし、またあるエンドではリリアの聖剣によって斃される。
そしてアイリーンは....
そのどさくさにまぎれて
とても雑な死に方をするのよ＿＿＿＿＿＿
魔王となったクロードが放つ光線にじゅっとやられることもあるし、
魔王復活の儀式の生贄になったりもする。
ひどいとナレーションで死亡することもある。
アイリーンは婚約破棄までが最大イベントで、
その後の処理がめんどくさくなったというスタッフの意気込みが透けて見える扱いだ。
「(そりゃ殺しとけばユーザーから文句は出ないでしょうけれど！)」
殺される方はたまったものではない。
要するにフラグはクロード様！！
死にたくなければクロード様の魔王覚醒を阻止するしかない...！！
彼が唯一人間として踏みとどまる方法...
それはヒロインへの『愛』
しかし魔王は『2周目以降でルートが開放されるキャラ』
いわゆる隠し攻略キャラ！！
つまり1週目しかないこの状況でリリア様の攻略は不可能...
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