第九十四訓 ページ4
何十分？何時間？
片足引き摺りながら歩き続けてどれ程経ったか
一軒の茶屋の前でAは立ち止まった
一階は真っ暗だが見上げてみれば二階には灯りが灯っている
と言っても電気の灯りではなく、蝋燭か何かによる薄い灯り
ｶﾞﾗｶﾞﾗ
鍵のかかっていない戸を開け中に足を踏み入れた
誰も居ない店内を進み、店主しか入らないであろう奥へ続く暖簾をくぐればいくつか部屋やらが目に入る
すぐそこにあった階段を上がろうとした時
暖簾横の壁に見覚えのある刀が二本立てかけてあることに気付いた
片方はA自身のもの
もう片方は…
＿ｷﾞｬﾊﾊﾊ、祝杯だァ！飲め飲め！
＿真選組復讐の先駆けとしてはまずまずだな！何たってあの神速柊を潰したんだからよォ
＿すまねェ皆、せっかくの祝い酒がこんな狭くて薄暗ェ場で
＿何言ってんすか旦那、んなこと気にする必要ねェですよ！
＿そういえば辰巳の旦那、怪我は大丈夫なんですかィ
＿何とかな、ったく、一時はどうなるかと思ったぜ
＿この件はあの田舎の奴らに背負ってもらうとして、次はどうするか
＿あァ？んなの今はどうでもいーだろ、まずは乾杯だァ！
二階から下品な笑い声が聞こえてくる
鞘から抜いた"二本の刀"を手に取り、Aはゆっくり階段を上がった
左足を庇いながらで途中躓くも、酒だ酒だと騒ぐ連中は一切気付いていないようだった
ﾋﾟｼ
襖に走る切れ目
直後バラバラ崩れ、その拍子に起こった風が蝋燭の火を消し部屋は暗闇に包まれる
ずっと闇夜に包まれていたおかげでとっくに暗順応していたAは呆けた顔を晒す男共に言い放った
『御用改めである、攘夷派花林党辰巳大助及び他残党共…神妙にお縄に着きやがれ』
ｻﾞｼｭ
ｻﾞｼｭ、ｻﾞｼｭ
____
__
_
汁粉屋を出ると雨は上がっており、あれだけ江戸上空を覆っていた雲はどこかへ消え去っていた
雨の匂い混じる生温い風が身体を包む
今日は新月だったのか
非常灯以外町灯りがないこともあり、空にはいつもより沢山の星たちが瞬いている
ふわり
風に流されてきた湿り気のある何かが目の近くにへばりついた
小さなソレを手に取って見れば、暗くてよく分からないがおそらく一枚の花びら
季節を鑑みて桜の花びらと推測される
花びらを捨て、Aは力なく呟く
『やっぱり春なんて、大嫌いだ…』
暫しの間ﾎﾟﾀﾎﾟﾀと垂れ落ちるナニカを見つめ、そのまま吸い込まれるように地面へと倒れた
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みぃ(プロフ) - この作品とっても大好きです！更新頑張ってください！ (2019年6月15日 16時) (
レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
伝説じゃないパンダ(プロフ) - とても、面白かったです！続きがとても楽しみです！立花。。。。あ、立花ぁ〜。続編おめでとうございます！！更新応援しています！ (2019年5月3日 20時) (レス) id: 38426ec896 (このIDを非表示/違反報告)
ミア(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！立花、、、、辛いです(泣) 続き楽しみにしております。頑張ってください！！ (2019年4月18日 1時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)
時神時神@コーラ中毒(プロフ) - 立花……（泣）続き楽しみに待ってます……立花ぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ (2019年4月18日 0時) (レス) id: 6a39446066 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あまね | 作成日時：2019年4月17日 23時
