【銀魂】Sleeping PrincessⅡ (ページ44)

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第八十四訓ページ44

『…ん』

目が覚めて最初に目に入ったのはコンクリートだった

ぼんやりと地面を眺め続けて数秒
段々意識がハッキリしてくる

ガバリと頭を上げ周りを見渡すと、恐らく廃墟ビルの建物内であること、自分の手足はそれぞれ拘束され、さらに柱の一つに身体を縛られていることが分かった

当然ながら刀も携帯も没収されている様子

前方5ｍ程離れた柱にぐったりした立花がAと同じように縛られている

暗くて確認しずらいが、立花にも目立つ外傷はなさそうだ

恐らく気絶しているだけだろう

外は既に真っ暗で何時間眠っていたのかは分からない

灯りといえば、離れた場所にポツンと置かれてある手提げ行灯ぐらいだ

そのすぐ側に下へ続く階段があり、仄かに照らされている

身体を捩ろうとして違和感を覚えた

余程強い電流を浴びたのか、手足に力を入れようとしても上手く動かない

そう認識したら頭にもピリピリ痺れが残っていることに気がついた

思考はハッキリしているが、痺れがとれるまで大人しくするしかなさそうだ

『(一体何が目的だ？)』

人質…だろうか？
それにしては誰も居ないし…

犯人は単独にしろ複数にしろ、一人は分かっている

汁粉屋店長のオヤジだ

理由は考えても分からない
店主と客、という繋がりしか思い当たらない

割と長いこと通っていた場所だったが、まさかこんな身近に刺客が居たとは…

悔しいことに全く気付けなかった

ｻﾞｯ、ｻﾞｯ…

『…！』

誰かの足音が近づいて来る

「目が覚めたか」

下の階から上がってきたのは見覚えのない男だった

「ったく、あのスタンガン食らってピンピンしてるなんて…一体どんな身体してんだ」

そうぼやきながら近づいてくる男をAはキッと睨み付けた

『何者だ、何の目的でこんなことを…』

「まあまあ、そんな殺気立つなよ。余興はまだ始まったばかりだぜ」

『余興…？』

クツクツ不気味に笑う男は手に持っていたラジオを地面に置き弄り始めた

ｻﾞｻﾞ

"…です！…広がっ…"

ラジオから途切れ途切れ聞こえてくる女性の声

何がしたいのかさっぱり分からないAは男の様子を見守ることしかできない

"現在江戸の警察組織総動員で避難誘導にあたっていますが…"

チャンネルを合わせ終えたのか先程より鮮明に聞こえる女性の声

と、その後ろから鳴り響いているサイレンの音

呆然とその内容を聞いていたAは絞り出すように口を開いた

『……火、事？』