第四十六訓 ページ47
『もっと脇締めて、肩に力が入りすぎだって。って違う違う、今度は…』
見回りが休みの日は道場を使って稽古を行うのが日課となっていたAと立花
初めは二人だった稽古もあっという間に大人数での稽古になっていた
Aの剣の強さとその教え方の上手さは皆に一目置かれ、立花以外の者たちも道場で稽古するようになったのだ
今では稽古を付けに来る皆を指導することがAの日課となりつつある
人の動きの癖を見抜くことに自信のあるA
組まれたメニューは各々に合うよう調整されており、少しずつ強くなっていく皆を見てAは遣り甲斐を感じていた
「師匠―!持ってきましたよ」
『ありがとう立花。皆、そろそろ休憩にしよう』
立花も自分の稽古の合間に色々手伝ってくれている
沖田との一勝負以来Aの生活はがらりと変わったが、なんだか満更でもない気分だった
「にしても、やっぱ教える人が上手いと稽古も遣り甲斐あるよな」
「ほんとだぜ、稽古ってこんなスッキリするもんだっけか?」
「そりゃ師匠が教えてるんだから当然です!」
うんうんと頷きながら自分のことのように鼻を高くしている立花
そういえば、立花が勝手に結成した柊親衛隊とやらはあれからすぐに解散させた
ボコボコに相手してあげた上二度と作らないよう言い聞かせたからきっと大丈夫だろう
「なあAちゃん、何だってそんな強いんだ?」
「俺も気になる!男の俺たちを一掃するパワーとその俊敏な動き、一体どこの道場で教わったんだ?」
「えェ!弟子の俺だってまだ聞いてないのに!師匠!俺も気になります!!」
道場…か…
『…己を知り、己を高めよ』
「…?師匠、何ですかそれ?」
『己を知り、己を高めよ。そして、昨日の己より強くなれ
我が道場の掲げる教訓だよ』
「へぇ、立派な教訓ですねぇ…って、我が道場?」
『私、昔道場の師範代だったんだ』
「「「「師範代!?」」」」
「ちょ、ちょっと待ってください!昔って…確か師匠15歳でしたよね!どういう意味ですか」
『その道場は父さんが開いてたんだけど、それを私が継いだの、10歳の時にね』
「10歳って…すげぇなAちゃん…」
「その歳で親の道場継いだって…親父さんは…」
『そ、もう居ないんだ父さん。だから私が引き継いだ…と言っても、そんな大層な道場じゃないよ。田舎の小さな道場さ』
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時