第四十一訓 ページ42
いつか
そんな頃もあったな、なんて笑いながら杯交わせる日が迎えられたなら
弟子としてそれ以上の幸せはないのだろうな…
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「(果たしてそんな日は来るのやら…)」
昨日のことを思い出して、まだまだ先は遠そうだと苦笑いを溢し、立花は飛んでいた意識を土方へと戻した
「浪士組の初仕事だ、気を引き締めていくぞ」
_はい!!
気合の入った返事が揃い、面々はいつになく厳粛な面持ちで屯所の門をくぐった
気合を入れて屯所を出た…のだが
「不逞浪士、見つからないですねー師匠」
隣から緊張感のない間延びした声がかかる
『そんな昼間っから堂々と出てはこないでしょ。とはいえ油断しないに越したことはない』
巡回ルートも終盤になるが、今のところ浪士は見当たらなければ争いごとも発生していない
このままいけば初仕事は滞りなく終わりそうだ
『(一人滞りなくなさそうな人はいるけど)』
隊の先頭を歩く近藤…の左側を歩いている土方から黒いオーラが出ている
相当機嫌が悪そうだ
浪士組は結成されて間もないため認知度が極めて低い、というかまだ全く知られていない
帯刀した集団が歩いているだけで奇異の目で見られる
見回り中、いかつい連中が帯刀して公然を歩きまわっている、と市民に通報されることも何度かあった
その度に市民や警察に説明をしては誤解を解いて、という流れが出来上がる
説明役はもちろん土方だ
まだ警察組織隅々まで浪士組の存在が認知されていないようで、説明しても信じてもらえないケースさえあった
情報共有ぐらい済ませておいて欲しいものである
そんなこんなで予定通りに巡回は進まない、浪士も現れない、意気込んでいた隊内であがる不満の声、ちょいちょい行われる沖田からの嫌がらせ等々…
全てを治めにまわる土方に多大なストレスがかかっていた
「フホッ、あふぉふぉあひ、はんふぉへふへいふふぁいひほひはあへ!」
(訳:クソッ、あのオヤジ、ちゃんと説明ぐらいしときやがれ!)
さっきから瞳孔が開きっぱなしでイライラ全開の土方に隊の連中も周りの市民も怯えきっている
「あれれー土方さーん、どうしたんですそんなに瞳孔開いて。というかすげェ顔ですぜ」
「ふふへぇ!!へへぇほうほ!おふぉえふぉへ!」
(訳:うるせェ!!てめェ総悟!覚えとけ!)
「何言ってんのか分かんねェや、ちゃんと喋ってもらわないと」
やれやれといったジェスチャーをする沖田に顔を真っ赤にして何か叫ぶ土方
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時