第二十訓 ページ21
「師匠!師匠も俺の事ちゃんと紹介してくださいよ!」
やっとのことで豪快な握手を振り切った立花が隣のAに向いた時だった
ふらり、と傾く身体
「師匠!?」
「お嬢さん!?」
二人同時にあげられた驚いた声を最後に、Aの意識は途切れた
____
__
_
___皆、今日も張り切って始めるよ!
溌剌とした声が道場に響く
各々位置についたのを確認すると竹刀を構えた
___構え!…ひとーつ!
世の道そむく事なかれ
___ひとーつ!
邪の心一切断つべし
___ひとーつ!
虚言をつかず卑怯にあらず
___ひとーつ!
日々の鍛錬怠るべからず
___ひとーつ!
感謝の心忘るるべからず
___ひとーつ!・・・
少女を筆頭に続く掛け声
最後に、一際気合の入った声が道場に響いた
___己を知り、己を高めよ!
そして
昨日の己より強くなれ!
____
__
_
『……ん』
意識が浮上しゆっくり目を開けた
暫しぼーっと天井を見つめていたが、徐々に頭が働きはじめる
『(あー…久々にやっちゃったな…)』
医務室の布団に寝かされているようだ
あの後運んでくれたのだろう
身体がだるく、若干頭もくらくらしているが何とか身体を起こす
枕元にタオルと
タオルで汗を軽く拭い、カラカラの喉を潤すべく歩狩汗を流し込んだ
スッと襖が開いた音がし、そちらへ顔を向ける
とはいえ襖とAの座る布団の間には衝立があるため、誰が入ってきたのかは分からなかった
衝立の向こう側から話声が聞こえる
_そうだったんですね、知らなかったとは言え、俺は師匠に無理を…
_まあそういうこったァ、次からは気にかけてやってくれや
この声は…
『立花と松平公?』
思いの外かすれた声が出て自分でも驚いた
「し、師匠!!」
Aの声を聞き取った立花がバタバタと駆けてくる気配
そのまま勢い余って衝立を倒し、それはAの顔面にぶつかった
『……』
「す、すみません…」
半目のAにオロオロする立花
微妙な空気を助けるように松平が口を開いた
「調子はどうだァ?Aちゃん」
『大分楽になったと思ったんですけど、今しがた悪化しました』
「う゛…」
頭が痛いです、頭が…と立花をいじれる程度には体調も回復していた
『ところで、どうして松平公が?』
半泣きの立花は放っておくことにし、Aは先程からの疑問を訊ねた
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時