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第二十二訓 ページ23

Aは人より陽の光に弱い体質であった

少しくらいであれば陽を浴びても、体調が悪くなる前に日陰で休みさえすれば何も問題ない

だが、長時間直射日光を浴び続けると日射病と似たような症状が現れる

寒暖や屋内外は関係なく直接陽の光を浴び続けてしまうと、酷い発汗にめまいや頭痛を引き起こし、その後意識を失ったり数日高熱にうなされるなんてこともしばしば…

しかし不思議なことに、肌に直接日光を浴びなければこれらの症状が現れることはない

そのため基本的に外出時は三度笠を被るようにしている
笠を被ってさえいれば、陽の下であっても体調が悪くなることはないのだ

物心ついた頃には親から笠や日傘を持たされていた

遊びたい盛りの幼少期、自分の身体のことをちゃんと理解していなかったAは、
邪魔だからと笠を外したり日傘を放っては倒れ高熱に魘されで散々だったのを覚えている

今やそんな失敗も滅多にしなくなっていたのだが


『稽古の間くらいなら大丈夫だろうと思ってたんだけどね…』

縁側は太陽の位置的に照らされてはいたものの、定期的に日陰で休むように気を付けてはいた

稽古終わり、嫌な汗が気になり始めていた為すぐに部屋に戻るつもりだったが、広場に長居しすぎてしまった

もう少しだけならと過信し、結果迷惑をかけてしまった


『急に倒れたりして、心配かけてしまったね…ごめんなさい』

黙って話を聞いていた立花にAは謝った

「謝らないでください師匠!大事にならなかっただけで何よりですから!」

頭を下げると立花はギョッとして慌て始めた

心配
心配か…

誰かの優しさに触れたのはいつぶりだろう

Aの顔に自然と笑みが浮かぶ

「と、とにかく、今はもう少し休んでください!俺、タオルの換えとか持ってきます!」

『…ありがとう』

「…!」

気付けばAは感謝の言葉を述べていた

それを聞いた立花は喜びを隠せていない表情で「はい!」と返事をし、足軽に医務室を後にした

笑みを浮かべたまま見送ったAだが、だんだんとその表情は暗くなる


『でも……ごめん、なさい』


小さく、細い声で呟いた

何も映さぬその目を部屋を出て行った立花が見ることはなかった

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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時

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