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「身体を触らないなんて随分手を抜くなァ？」
『…お触り代が発生するので』
︎︎若干バレない程度に顔を仰け反らせるが、それでもフェイストゥーフェイスの間は気休めでしかない。きっと｢こんなに寄れるのにお前はしなかったな｣と突きつけているつもりなのだろう。
︎︎確かにハニートラップのただの練習だとしても、行き当たりばったりでジンにしたとしても、本気で挑まないのは慢心を招く。それはいつか任務に支障をきたす可能性がある。途中まで良かったのだがジンの予期せぬ行動にたじろいでしまったのが敗因だ。
︎︎私は図星で痛い批評だったため逃げの言葉を吐いてしまったが、ジンは手を抜いた上に口答えした私にイラついているだろうか。あれほど実践させようと私を煽っていたくらいだから、期待してくれていたのかもしれない。そう考えると自分を恥ずかしく思う。
「…で？惰性の詫びは？」
︎︎ん？
︎︎そう喉の奥でくぐもった音が出たが、確かに期待をしてくれていた(?)相手に失礼だという認識はある。素直に反省しているため、そのまま言葉にした。
『……ごめんなさい』
「それだけか？」
︎︎ジト目でジンを眺めた。何を今更とでも言うような素知らぬ顔が鼻につく。
︎︎何が言いたい。私が珍しく素直だったのに跳ね除けるなんて。
︎︎ジンは溜息をつくと挑発的な目でこう言った。
「蕩けるような口付け1つもできないとは、気の利かねぇ蜂だな」
︎︎それは返答次第でするつもりだったっつーの！！
︎︎そう吠えたい欲をなんとか抑える。
︎︎ベルモットと意見が別れたもの。どうか、と曖昧に聞いた後のジンの行動で予想されていたものが2つ。1つは私の｢からかう｣という予想。もう1つはベルモットの｢キスをする｣という予想。
︎︎それぞれへの対応も考えていた。私がキスをするのはからかわれた後のものだった。子供だと揶揄うのなら大人だとキスで黙らせるつもりだった。
︎︎ちなみにキスされそうになったら｢本気にしちゃってぷぷぷ｣とからかってやるつもりだった。いつものお返しに。
︎︎だがどちらにも転ばず、彼の予期せぬ行動に私の素が出てしまったのだ。まさかキスをするでもなく距離を縮めるだけとは。
これは煽り文句。乗れば彼の思い通りだ。
しかし、ハニトラを生業とする私が若干睨むのは収えられなかった。だからなのかふっ、と鼻で笑った彼は私を見透かすように言った。
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作者名：ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時：2024年2月9日 16時
