・ ページ9
『流れで、…ジンに…はに…らを』
真ん前の眼光に耐えられず口籠もりながら顔を背けた。
「なんだ」
『っ、だからぁ!ジンを対象にした議論もしたの!!』
ええいままよ!と全て吐き出した。
︎︎すると私の息遣いだけが残った。
…待って。一応身の危険を感じながら覚悟して答えたのに沈黙?できれば「そうか」くらいの返しが嬉しい。
何を考えているか分からないが沈黙を破るように、息を整えてからぶっきらぼうに付け加えた。
『…だからベルモットは私が実践したと思ってあなたに話しかけてたんじゃない?』
そう言い終わるか言い終わらないかでジンの方へ目線を向けたら、視界いっぱいが黒色で塗りつぶされた。そして煙たい臭いもふわっと香る。
『え、』
突然のことに声を漏らして見上げると、ジンの唇はいやらしく片方の端を吊り上げていた。
「やってみろ」
嫌な予感がしつつも確認のため、なにを、と乾いた声で小さく聞いた。
「それが効くか試したくないのか」
それとはまさしく“それ”だろう。
ハニトラをされると分かってたら無理に決まってる、と心では思ったが、口には出せなかった。ここで断ればジン相手の攻略法について話していたことを怒られるか、弾が掠るか、息の根を止められるかだろう。生を終えるか恥で済むかなら即決だ。
それに、ジンがいう通り好奇心が勝ってしまった。
『…ジン』
距離を縮めて名前を呼ぶ。目線だけを上げて可愛げのある上目遣いを意識すると、ジンが静かに目を見開いて私を見つめている気がした。
1回。2回と睫毛を上品に上下させるように瞬きをする。3回目で丁寧に瞼を開けて深緑に発色する瞳を強く捉えた。そこから僅か3秒見つめ合うだけなのだが、私には長く感じた。
『ね、ど?』
若干右に首を傾け、返答を待つ言い方をした。
︎︎この後の相手の行動で考えられるのは様々あるが、ジンの行動予想に関してはベルモットと意見が分かれた。答え合わせだ。
「……まだだな」
︎︎左手が冷たく包まれた。その感覚に驚いて肩が揺れる。大きなジンの右手で掴まれたらしいが、ジンを見つめていたため直ぐには分からなかった。
︎︎肩を揺らした私に気を良くしたのか、にやりと小さく弧を描く唇が。私を獲物のように捉える瞳が、胸の前まで引き寄せられた左腕分の距離を残して、グッと目前に迫った。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時