強奪(バーボン) ページ5
「…のーあいす」
「no life?」
冷蔵庫から横へ目を向けてみればキャンティがいた。すらっとした立ち姿を眺めながら頷く。
いかなるときも食べたいのはアイス。辛い時も冷たく慰めてくれるのがアイスだ。でかい任務を終えた今、今日まで大切にしていたそれをご褒美にしていたのに見当たらない。
︎︎キャンティはペットボトルのラベルを捨てに来たのか、点線に沿って破きながら空を見て呟いた。
「…そーいえばバーボンもアイス食ってたな」
︎︎矛先が定まって金髪を探しに向かったが、褐色肌はすぐに見つかった。のんきにリビングのソファで食べやがっていた。
︎︎足音に怒りが滲んでいたからか、私の殺気に気付いていたらしく、瞬間目が合った。その手にはice cup。
『褐色ー!!!』
「えぇ??」
︎︎目を光らせると手元のものに走り寄る。ナチュラルに戦闘態勢を取るが、この私からアイスを奪っておいていい度胸だ。
『...?』
︎︎目をアイスから上へ向ける。若干引きつつも訝しげな表情が私を見下ろしていた。
「...あげませんよ」
『…くれたらいい事あるけど』
︎︎まぁ相手による、と付け加える。バーボンが眉を顰めた。
︎︎アイスが目の前にあれば"なんであれ"食べたくなるものだ。
︎︎私欲に加えて、心の広い私は借りを消す上に褒美を与えようとしている。なのに借りを忘れているらしい。
︎︎キッと目を鋭くしてまたも見上げ、刺々しく言った。
『私の缶詰勝手に捨てたよね』
「賞味期限とっくに過ぎてました」
『缶詰は期限切れが美味しいの!缶熟を待ってたの!』
︎︎期限切れは味が染み込み美味しいのだ(個人の感想です)。5年前の私が5年後の私に向けた贈り物なのに。食べられたかった缶詰と食べたかった私は悲劇である。
︎︎怒りが沸く前に本題へ戻ろうと咳払いをした。
『とにかく借りを今返させてやろうとしてるの!!安いもんでしょ!』
︎︎今まで缶詰について定期的に毒を吐いていたせいか、その都度多分鬱陶したかったようで苦い顔をしつつも「まぁ…」と了承した。その証拠に確認をしてきた。
「じゃあ缶詰の話はこれっきりってことで」
『…いいわよ』
︎︎苦い顔で承諾した私へ半目になったのが苛つくが、折角折れてくれているので大人しくしておく。
︎︎そんな私を逆撫でるように、今し方使っていたスプーンでチョコアイスを掬うと胡散臭い笑顔で私に差し出した。
「はい、どうぞ」
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時