躊躇 ページ31
何歳だったか。同世代は中学校とか行っていたくらいの年頃に、危機的状況に陥っていた。
「お前、黒の組織だって?」
当時組織を取り込もうとしていた分を弁えていないとある犯罪組織の構成員に痛めつけられていた。
組織は子供を組織の構成員に育て上げることは滅多にせず、既存の他組織などから引き抜いていた。そのため組織を家とする私は付け焼き刃程度の護身術しか持ち得ていなかった。
血を吐き捨てる豪胆さはなく、ごくんと飲み込んで怯えた目を向けた。
「はっ、あの闇夜の巨大な鴉の群れに、こんな
私は鵯でもなければ鴉とも縁がない、生物違いだ、と思ったが震えた口では主張できなかった。
ジンの言葉を聞く今では分かる。ただの煽りだったのだ。主張しなくて心底良かった。
「お〜い、泣くとか喚くとかしてよぉ。退屈だぜ」
今思えばどうとでもない組織だったのだろう。私らの組織を取り込もうだの、ましてや、
胸元にある護身用の銃を取り上げないだなんて。
なのに、それでも撃てなかった。拳銃を握ることさえしなかった。
怖かった。
銃の反動、火薬の匂い、飛び散る朱の粒子。
怖かった。
人を殺めてしまうのが。
「…つかこんな奴幹部でもねぇよな」
打って変わった低い声に肩を震わす。
「人質にも中枢への案内役にもなりゃしねぇし」
心臓が大きく波打つ。
勇気ない私とは対照的にすんなり銃口を私へ向けられた。
「消えろや」
そう言い終えたのかどうか、呆気なく横へ倒れた男に呆然とする。倒れながら朱色を吹き出していた方向を見れば、
銀髪の男の子がいた。
無言のまま冷たい目で動かなくなった男を見ていた。
そう言えばこの子は同じ組織の子ではなかったか?それも最短で幹部に成り上がりそうだと噂されていた…。
彼が銃を下ろしたのを見て我に返った。
『ああぁぁの、っ、…その…』
先程の危機と目の前の光景と、そして噂の"凄い人"。処理が追いつかなくてどもれば、冷たい目が私に向いた。
「お前、何故うたなかった」
喉がひゅっ、と鳴った。
「殺るか殺られるかの世界でためらうとは。お前じゃここじゃ生きれねェ」
それだけ言うと一瞥し、去っていく。
その背を今も尚思い出す。
その度に弱かった自分に線引きをする。躊躇いは命取り。ならばもう躊躇わない。
その覚悟はもう、とっくのとうに出来ていた。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時