反対 ページ29
︎︎足音が静かに響くとある倉庫内。倉庫は薄暗い。
『…なんでこんなとこを了承したのよ』
「都合が良かった」
︎︎小さく不満を伝えれば即答された。
︎︎全然便利なところではない。東京から新幹線で3時間程の、最寄り駅から車で1時間かけた人気のない港の倉庫。次の任務内容やら計画中の任務に必要な情報収集やらを新幹線の個室でしていたため退屈ではなかったが、お尻はきっと潰れた。
︎︎そんなこんなでこれから相手と取引をするのだが、気配がない。
︎︎倉庫の真ん中まで歩くと、足を止める。
︎︎そして不自然でないように周りを眺め、とんとん、と軽く踵を床に打つ。すると「あぁ」と感心した声を漏らしてから、ジンは先程と同じくらいの声量で話し始めた。
「お前の澄んだ目は嘘がねぇな。コウモリの目を覆うみたく暗闇に染まらせようか」
『ありがとう。でも…いざとなれば孤独から抜け出すのもお忘れなきよう』
「お前こそ俺がそれを許すほどヤワじゃねぇってこと、忘れるな」
︎︎色仕掛け専門でも、私だって足でまといになりたくない。出るとこは出るつもりだが、睨まれた。それでも怯まない私は"初仕事"を強調する。
『その初仕事がハエの湧く場所じゃなくて良かったわ』
「任務を与えた記憶はねェ」
『つれないわねぇ。私との共同作業、嬉しくないの?』
「…共同作業、か」
︎︎復唱され、強く頷く。任務の幅を広げられるし、なによりジンの私への評価を変える絶好の機会だ。
︎︎期待して言葉を待てば、ふっと笑ってこう言った。
「俺がコウモリを狩る間、お前には闇に染まるっつー仕事をやる。条件は俺の仕事に手を出さねぇことだ!」
︎︎言い切るとジンは発砲した。その一瞬を合図に私は倉庫内の物陰へ走る。
「っ、」
︎︎弾が掠ったのか相手…否、取引相手が悲痛な息遣いをしたのが聞こえた。それを皮切りに銃声が絶え間なく響く。
(早く終わって)
︎︎耳を労って両手で抑えつつ願う。
︎︎戦闘要員じゃないため、銃声から相手が何人か、どこにいるか判別はできないが、物陰に隠れつつ周りを警戒するのに越したことはない。
「ぐあぁぁ…っ」
︎︎その呻き声を1発の音が止ませた。銃声が消えたが、息を潜め様子を窺う。
︎︎荒い息が自分でも分かる。まるで死に際のような…。
『!!』
︎︎気付いて振り返れば、暗闇に紛れた残党が肩を抑えながらこちらを見ていた。
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時