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『…ジン、迎えありがとう』
︎︎アジト付近にベルモットを下ろし、今は私のセーフティハウスへ向かう道中。時間があるらしくお言葉に甘えて後部座席に乗せてもらっている。
「あいつとの行動が増えるかもしれねぇが、何かあれば俺に言え」
︎︎突然そう言われ、ジンに顔を向ける。彼は片手をハンドルに添え、目を前から逸らさず言った。
「何を考えてるか分からねぇのがあいつだ。…まぁ純粋にお前を鍛えようとしているみたいだが」
︎︎だが、の後に続くのは「所詮は組織、みんな利己的だから利用されるな」だろう。コードレス時代からそう言われ続けた。私が言わんとすることが分かると知っているからか、今では彼の口からそれを聞くことはない。
『…どうして2人は私のことで喧嘩するの?』
「反りが合わねぇからじゃねぇか?」
『ねぇ』
︎︎こっちは素直に真剣に聞いてるのに。口をへの字に曲げて答えろと言えば、彼はちらりとバックミラーに目をやってから真剣な声で返した。
「1つ聞く。お前は任務の幅を広げたいか?」
︎︎No.3としてのジンの問い掛けに、背筋を伸ばす。今の話で問うということは、私のこれからの任務方針でイザコザがあったのだろうか。
『えぇ、役に立てるのなら』
︎︎当然の返答をすればジンはため息をつく。そして忌々しそうに呟いた。
「ベルモットはそのことに賛成している」
『…ベルモット"は"?』
︎︎なんだか煮え切らない言い方だ。…もしかして、と息を吸えば、彼は居心地悪そうにふんと鼻を鳴らした。
「今のままでも充分だろ。組織に尽くす心意気は認めるが、これ以上は望んでねぇ」
︎︎ぶっきらぼうな言い方で、私の任務方針に保守的なことを伝えたジン。忠誠心を気にするジンがその上限を定めるなんて、とぽかんとしていれば、何を思ったか不器用にこう言った。
「すまなかったな、否定的で。…まぁ、そういうことであいつとは反りが合わなかったんだ」
︎︎だがあいつは自分の任務量を減らしたいだけだと思うが、と素っ気なく付け加えた言葉にぱちくりと瞬きをした。
『…なぁんだ』
︎︎どんな理由であれ、2人は私のことについて考えてくれていたのか、と心が温まる。さっきまでの寂しさは何処へやら、密かに頬を緩めていれば、ジンは声色を戻して語気を強めた。
「お前が良いならこのままベルモットに任せるが、1度でもヘマをすれば任務を戻す。いいな」
『ふふ、失敗しないから安心して』
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時