足音(安室、コナン) ページ22
︎︎Aとスイーツを2人で食べるようになった。約束はなく、偶然相手がいて偶然スイーツを手に持っていれば始まる。最近お互い2人分買うのはこのせいだ。ただ彼女がいないときはコナン君や風見にあげている。
︎︎幹部との仲を深める絶好の機会。以前ジンとキスをしそうな距離まで迫っていたAは誤解だと弁明していたが、ジンがあの至近距離を許すくらいだ。Aの信頼を勝ち取れば結果としてジンの信用を得る可能性が高まる。仲間想いな彼女を俺の後ろ盾にしたい。
︎︎だがあの日のスイーツがジン絡みとは。彼女のあの様子からジンは俺のために買っていなさそうだ。そうと知っていれば彼女と食べる真似はしなかった。なぜならその2人の時間を邪魔して暫く、任務でこき使われたからだ。
︎︎信用の置けない俺が彼女のために買ったスイーツを彼女と食べていたなんて分かれば…。
︎︎内心頭を抱えていると、
「悩み事？」
︎︎目の前のカウンターにいたコナン君に声をかけられた。
︎︎彼は謎解きに目がない小学生。組織の策略に対抗し得る頭脳を持つ。
「…もしかして」
「いいや、違うよ。ただ依頼がね」
︎︎目が鋭くなった彼にすぐ否定する。この子は僕が組織のことを考えていれば勘づく。表情管理が甘いのだろうか。
「じゃあ僕の話聞いてくれる？」
︎︎いつもは依頼の話もせがむが、今日は違うらしく身を乗り出してきた。学校の話をしそうな雰囲気だが彼は違う。口に手を添える仕草で、耳をコナン君に寄せた。
「銅座駅で黒のポルシェを見かけたんだ」
︎︎そして身を引いていく彼は、僕の顔色を伺っていた。
「ふうん」
「歩美ちゃんが近くのお店にいたんだけど、客が店員の人に言い寄った後、客に続いてその店員も乗ったらしいんだ」
︎︎その事実の穴に気づくが、僕は黙って聞く。
「その店員も組織の一員だよね。ベルモットも乗ってたみたいだし、車は本物だよ」
︎︎僕の思考を読み、車が組織のものではないという穴を埋めた。だが彼の鋭い視線を吹き飛ばすように笑った。
「だとしても僕の関与し得ない話だ」
︎︎それに、と付け加えてバーボンの表情で口元に人差し指を立てた。
「好奇心は君の足元を掬うよ」
︎︎どれだけ頭が切れようとも小学生が首を突っ込むのはよくない。公安としてこれ以上組織に子供を巻き込んではならないのだ。
︎︎平和には程遠いと内心嘲笑しつつ、決意を新たにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時：2024年2月9日 16時
