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︎︎時間をかけるほどの奴でもない。そう判断するとすぐさま背後を取り、背中にゴリッと銃口を押し付ける。
「2度目はねェ」
︎︎耳元で怒気を帯びて言えば、了承の言葉を叫ぶと共に走り去っていった。
︎︎あの様子なら大丈夫か、と眺めていると、ベルモットが笑った。
「ワンコに随分大人気なく吠えたわね」
︎︎可笑しくって堪らないと目尻を拭う。Aの顔でベルモットの声と立ち方をしていることに違和感を覚えながら、銃を懐へ仕舞った。
「そういうお前こそ面を作るとはな」
︎︎それも追い払うために、だ。Aを気に入っていたとしても所詮は組織。幹部同士でも裏切りや蹴落としが当たり前だとベルモット自身が知っているはずだ。…あれは裏切りというより"利用"だったか。
︎︎ベルモットは笑いを含めて相槌をすると、何でもないように答えた。
『社員割が本命よ』
︎︎仕事に戻るわ、と店へ戻っていった。Aの声でまるでAのような理由だと、暗い路地裏で1人煙草に火をつけた。
……
「Aの洞察力と対応力が知りたいわ」
︎︎ベルモットが変装のいろはを教えると息巻いていたが、ここまでとは。
「勝手にしろと言ったはずだ。あいつの変装や色仕掛けの指導は好きにしろ」
︎︎否定的な俺に対し、意気揚々とするベルモット。イラついて返せばキョトンとした反応をした。
「あの子のスキルを知りたくないの?」
︎︎呆気に取られた顔だが、俺を煽ろうとしているのが分かる。巻き込まれるのは面倒だ。だが一応聞いてはみる。
「あの子の任務に苦い顔をするのはあなたくらい。技量があると分かれば眉間の皺の1つは減るんじゃない?」
︎︎最後の一言で眉を寄せたため今1つ増えたばっかりだ。Aの任務を巡る俺との攻防戦の名残りでうっかり口が滑ったらしい。
︎︎ただ一理ある。幹部が構成員の任務の幅を狭めるのはいただけない。未熟さを危惧して否定的ならば、見込みがあるか判断、若しくはベルモットが指導すれば良いこと。合理的だ。
「…で、俺が必要だと」
「ふふ、乗り気なら手を借りてもいいわよ」
︎︎ギロりと睨みつければ楽しそうにこう言われた。
「あの子が言いそうな言葉なのに、私だと怖い顔なのねぇ」
︎︎にまにまと口に手を添えて生暖かい目を向けてくるベルモット。頬が引き攣りながら無視を決め込み、"Aの技量を試す計画"とやらの共有を催促した。
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時