番外編:往訪 ページ18
本編と関わりますが、内容が野暮なのでお洒落な読み方をしたい人は読み飛ばすのがオススメです。"来訪"前後のジンsideです。
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︎︎Aは振った相手と会うのが気まずいからバイト先を変えたらしい。任務では気まずい思いした事がないのにな、と言えば表と任務は違うのだと返された。何にせよ気まずく感じるのなら半人前だと笑っていたが、新しいバイト先にそいつが現れているとベルモットから聞いたときには眉をひそめた。
「場所は聞いていたし、折角だからAを見ようと思って行ったの。そしたらAがいるか聞く、あの子と同世代くらいの男の子がいたわ」
︎︎Aが好きだと言って恋バナが好きそうな店員から情報を聞き出していた、とまで聞いて確信した。いや、早計か。兎に角分をわきまえない輩がAの居所を嗅ぎ回っているのは確かだ。
︎︎目を鋭くする横で、バイト先を知らない俺よりもAと仲が良いと得意げなのか、またはそれを聞いた俺の行動を予想しているのかニヤつくベルモットは無視した。
……
︎︎その日、急遽シフトに入ったA…に変装をしたベルモットに、そいつは迫っていた。
︎︎ベルモットの言う恋バナ好きな店員とは、興味津々に2人を見ているあの女だろう。どうなるか見届けたそうだったが、ベルモットが耳打ちをして裏へ男を連れ出した。店員や客としては配慮と思える行動だが、実際は。
「おい」
︎︎路地裏で待っていた俺の前へ連れてくるためだ。ベルモットが面白そうだからと身を乗り出してAに変装したのだ。演技が上手いのか、こいつが今までAをよく見ていなかったのかは分からないが騙せたようだ。
︎︎ドスの効いた声で呼べば男は暗闇にいた俺に気づき震え上がった。俺とベルモットを交互に見て混乱している。
「Aの周りをこそこそ嗅ぎ回ってんのはお前か」
「そ、そんなことは…」
「嘘はよくねぇなァ」
︎︎思わず癖で懐に手を入れたが、ベルモットに手で制された。俺のこの動作で小さく叫んで足を震わせているのを見れば悪くもない。
︎︎ベルモットはそんな男にくすりと笑ってから冷たい声で言った。
『私たちは別れたの。もう関わらないで』
︎︎男は冷ややかな声に驚愕するが、ベルモットに顔を向けて「でも…」と縋るように呟く。こんななよなよした粘着質がAに付き纏っていたと思うと虫唾が走った。
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時